設置における10の課題

Power over Ethernet (PoE)

Power over Ethernet (PoE) は、データトラフィックに使用されるものと同じケーブル使用してネットワーク機器に電力を供給する手段です。PoEを使用することにより、IP電話機、無線アクセス ポイント、ネットワークカメラなどの受電側機器 (PD) に対して、既存のインフラストラクチャー経由で電力供給とデータ送信を行うことができます。インフラストラクチャーをアップグレードする必要はありません。

スイッチをネットワーク機器の共通電源として使用するため、ネットワークの設置やメンテナンスが容易になります。

PoEには現在2つの規格があります。

  • IEEE 802.3afの最大供給電力は、ポートあたり15.4 Wです。
  • IEEE 802.3atの最大供給電力は、ポートあたり25.5 Wです。これはHigh PoEと呼ばれています。

PoE IEEE 802.3afでは、給電側機器 (PSE) はポートあたり最大で15.4 Wの出力を供給しますが、この電力の一部はツイストペアケーブルで失われます。そのため、受電側機器に保証される供給電力は、12.95 Wのみとなります。

IEEE 802.3af規格でも電力クラスと呼ばれるPoE装置用のさまざまな電力供給量が規定されています。PSEがこの電力分類をサポートしている場合は、接続されているPDの電力クラス (1~4) に応じて、各ポートに供給される電力量が自動的に調整されます。クラス0はデフォルトで、最大供給電力は15.4 Wです。クラス1~3はデフォルトよりも少ない電力を供給します。クラス4はより多くの電力を供給しますが、IEEE 802.3at規格に準拠したPDにのみ利用することができます。

接続されているPDが電力クラスをサポートしていない場合は、PSEはデフォルトであるクラス0の電力 (15.4 W) を供給します。

次の表は、PSEとPDの電力レベルを示しています。

クラス 用途 給電機器 (PSE) の出力電力 受電側機器 (PD) の最大電力
0 デフォルト 15.4 W 0.44~12.95 W
1 オプション 4.0 W 0.44~3.84 W
2 オプション 7.0 W 3.84~6.49 W
3 オプション 15.4 W 6.49~12.95 W
4 オプション: IEEE 802.3atのみ 30 W 12.95~25.5 W

 

表1: システムの電源容量の計算に使用する、さまざまなPoEクラスの値。

通常PSEは、ある一定の合計最大電力を供給します。これは電源容量と呼ばれており、一般的に300~500 Wです。接続されているPDが電力クラスをサポートしていない場合は、各PoEポート用にフル電力15.4 W (デフォルト: クラス0) を確保しておく必要があります。つまり、300 Wのスイッチで電力を供給できるのは、48ポートのうち20ポートのみということになります。しかし、すべてのPDがクラス1の装置 (4 W) でスイッチと通信している場合は、300 Wで十分に48ポートすべてに電力を供給することができます。

スイッチの電源容量を上回ることのないよう、各ネットワークスイッチに接続される装置すべての合計電力消費量を計算する必要があります。

PoEとアクシスカメラの電力仕様の例

以下は、PoEのコンセプトとアクシスカメラの電力計算の例です。これらの例で使用される図および製品は変更されることがあります。

図2:PoE システムの電力要件の例

上図では、クラス2のカメラ6台が1台のPoEスイッチに接続されています。クラス2の装置はスイッチから最大7 Wを必要とするため、必要な合計電力は6 X 7 W = 42 Wとなります。これがPoEの電源容量となります。つまり、最低42 WをPoEに供給することのできるスイッチが必要です。

AXIS Q6044-EのHigh PoE

データシートには、AXIS Q6044-Eの最大電源入力は60 W、ミッドスパンAXIS T8124の必要電力は最大74 Wと記載されています。
これは、ミッドスパン自体も電力を消費するため、ミッドスパンとカメラをつなぐRJ-45ケーブルで電力損失が発生することが理由です。カメラに適切な電力供給を確保するには、ミッドスパンはカメラが必要とする合計電力よりも多くの入力/出力電力を必要とします。

P13xx-EのPoE

一部のカメラは、2つの異なるクラスのPoEに対応しています。これは、加熱装置や冷却装置などの補助装置を使用するかしないかによって必要ワット数が異なるためです。最初の仕様は製品自体の電力、2つ目の仕様は追加装置を含めた必要電力を示します。AXIS P13xx-Eはハウジングに収納されており、その仕様は「PoE IEEE 802.3af 最大12.95 WまたはHigh PoE 最大25.5 W」となっています。

使用するスイッチの選択方法

PoEスイッチのメーカーは、多くの場合3つのパラメーターを記載しており、使用するスイッチを決める際には、このパラメーターを考慮します。たとえば、以下のような3つのパラメーターが記載されています。

  • PDへの供給電力: 最大 15.4 W
    この値は、スイッチが各ポートあたりに給電可能な最大PoE電力で、PoEの合計電力容量とは無関係です。これは「最大」の値であることに注意してください。
  • PoEの電力容量: 
    PoEの電力容量とは、スイッチがすべてのポートに供給することのできるPoE電力の合計です。この値が高くポートが少ないと、ポートあたりのワット数は高くなります。この値が低くポートが多いと、ポートあたりのワット数は低くなります。 
  • ポートあたりの平均PoE ワット数:13
    例: PoEの電力容量が50 W、スイッチに4ポートがある場合: 52 W / 4 = 13 W
    この値は、すべてのPoEポートに電力が供給されているときに、スイッチが各ポートに供給可能な電力を示しています。安全のため、この値には余裕を持たせておくことが重要です。

温度条件によっては、各装置のPoE電力がより重要となります。多くのデバイスは、使用可能な電力に基づいてさまざまな温度レベルで機能することができます。屋外対応カメラに適したミッドスパンが使用されていることを必ず確認してください。下の仕様シートに示すように、AXIS P1353-EはHigh PoEを使用することで-40°Cという極寒環境でも動作します。 

図3:  AXIS P1353-Eの仕様シート。

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