公共の安全を守るショッピングセンターのセキュリティ強化
クイーンズランドインベストメントコーポレーション (QIC) は、Axis Network CameraとSecurity Radarの検知網を使用してハイリスクエリアの可視性を高め、自傷行為インシデントやセキュリティ違反の防止に役立てています。
利用者と公共空間を守る
クイーンズランドインベストメントコーポレーション (QIC) は1991年に長期的な投資責任を担う企業としてクイーンズランド州政府により設立され、その後はインフラ、不動産、プライベートデット、プライベートキャピタルなどにわたるオルタナティブな実物資産ソリューションを提供する大手専門投資管理会社へと成長しました。
現在、QICはオーストラリア全土で24か所のショッピングセンターを管理しており、その総賃貸面積 (GLA) はおよそ130万平方メートルに及びます。
オーストラリア全土で多数の大規模ショッピングセンターを管理する立場上、QICは小売店のテナントやその従業員、お客様、利用者に安全な環境作りのために十分な時間とリソースを費やしています。 この安全性重視の姿勢は、新型コロナウイルス感染症の登場後に大きく注目を集めました。この時期、オーストラリアのショッピングセンターでは自傷行為のインシデントが大幅に増加し始めていました。
業界と社会の深刻な課題に応えるため、また自社保有するショッピングセンターで2021年に発生した特定の自傷行為インシデントへの対応策として、QICは「プロジェクトセーフガード」と名付けた新しい安全対策プログラムを開始しました。 プロジェクトセーフガードはQICのショッピングセンターでの自傷行為やセキュリティ違反インシデントの可能性を大幅に軽減する目的で設計され、ニッチなユースケースのためのオーダーメイドソリューションを採用しています。
同プロジェクトでは監視技術を活用し、自傷行為の危険に直面している、あるいは、施設内外の高い吹き抜け、駐車場のスロープ、サービストンネルなどのリスクの高いエリアに不正に侵入しているなど、個人による異常な活動を検知します。 この検知機能はQICの資産を保護しつつ、前述のようなインシデントの発生を減らし、防止する機会をもたらします。
安全性監視をスマートに
QICではすでに自社のショッピングセンターに多数のAxis Communicationsネットワークカメラを設置していましたが、ロビーナタウンセンター (クイーンズランド州ゴールドコースト) での試験導入を開始するにあたり、必要な技術の支援を受ける目的でPMT Security Systemsに協力を求めました。PMT Security Systemsはこの地域のAxisパートナーです。
ロビーナタウンセンターは5つの立体駐車場と350を超える店舗で構成されています。その広大な敷地にはネットワークカメラによる監視とサイトの24時間年中無休のセキュリティ管理室が必要であるほか、警備員による見回りと車両の巡回による支援も必要です。
QICとPMT Security、Axis Communications、ビデオ管理システムプロバイダーのMilestone Systemsは共同で、ショッピングセンター内のリスクの高いエリアを特定するよう設計されたソリューションを開発しました。開発の指針として、過去のインシデントレポートのほか、Lifelineとの提携で設計された自傷行為の監査ツールが活用されています。
このソリューションが期待通りの効果を発揮するには、広い範囲をカバーし、かつ詳細で正確なデータを提供する監視技術が必要でした。 そこでQICは180度の視野と60メートルの認識距離をサポートするAxisレーダーカメラに加え、インシデントの視覚的な識別に対応するカメラを開発することで運用目標を実現させ、さらに導入技術のフットプリント要件を最小限に留めることに成功しました。
このソリューションには、Axisのその他のソリューションも活用されています。たとえば、ディープラーニング機能を搭載したAxisネットワークカメラは、特定の視野が必要となるエリアの中央周辺で複数の場所に設置されました。
ショッピングセンターの多種多様なリスクを見直し、評価する良い機会なので、自傷行為以外のインシデントも含めて検討しました。 QICでは駐車場などの場所の悪用や、ハイリスクなエリア、無防備なエリアに立ち入る人々に注目しました。 一部のショッピングセンターではエントランスがオープンモールスタイルで、営業時間外も閉鎖することができません。
リスクを排除する
QICとAxis、PMT Securityは協力して新たなカメラと検知デバイスのフットプリント向けに複数の業務ルールを設定し、ロビーナタウンセンターにあらかじめ導入されていた既存のMilestoneビデオ管理システムに実装しました。このルールは、特定の時間、特定の場所で異常な活動があった場合に管理室にいるセキュリティチームのメンバーにアラートを発信します。
「私たちはリスクの高いエリアだけで分析技術を利用しています。 残りのカメラは、以前と同じように使用されています」とパーマー氏は説明しています。
特定の業務ルールと連携して動作する分析ソフトウェアの能力は、アラートの誤検知を最小限に抑える上で重要です。誤検知の抑制は、セキュリティ担当者の過剰な負担や疲労の回避に役立つためです。
Axisのカメラとセンサーに仮想トリップワイヤーなどの機能が搭載されているおかげで、Milestoneシステムにきめ細かく規定された業務ルールのプログラムを組み込み、ほとんどのアラートを確実に本物のインシデントでトリガーさせることが可能でした。
ロビーナタウンセンターの駐車場には以前から、パン、チルト、ズーム機能を備え、広範な視野をカバーする最新のAxis PTZカメラを設置していました。 ソリューションを導入したことで、既存のPTZカメラを引き続き使えるだけでなく、Axis Security Radarsを追加して併用し、既存のカメラ群のメリットを一層活かすことができるようになりました。 よりすぐれた分析結果を得られるよう、多数のカメラの位置を固定したり、移動させました。 ただし、古いモデルのカメラや、必要な分析処理を行うことができないカメラについては更新して、別の目的に転用しました。
取り戻した手綱
プロジェクトセーフガードの試験導入でAxisのカメラとセンサーシステムを実装した後、セキュリティ担当者は少なくとも2件の自傷行為インシデントについてアラートを受け取り、そのインシデントの回避に成功しています。
また、試験導入したショッピングセンターでは、さまざまなインシデントの検知漏れが大幅に減少しました。セキュリティチームはリスクの高いエリアで発生するセキュリティ違反にリアルタイムで対応することが可能となり、不法な侵入、徘徊、問題行為を含む施設の悪用防止に貢献しています。
さらにこの新たな技術は、営業終了後の安全確保が困難だったロビーナタウンセンターの屋外エリアにも役立てられています。 Axisネットワークカメラ群の非常に正確な仮想トリップワイヤー機能がショッピングモール全体をカバーするおかげで、セキュリティ担当者は屋外のエリアを積極的に監視することができるようになりました。営業終了後の無許可の立ち入りによる潜在的な悪用機会を防止できます。
さらに重要な点として、Axisのネットワークカメラとレーダー網による可視性の向上に伴って、以前は発生を確認できなかった事象をセキュリティ管理担当者が確認できるようになりました。 このような運用が、ショッピングセンターを営業時間外でも地域の人々にとって安全な場所にするというQICの高い目標を支えています。
セキュリティ担当者にとっては、Axisのカメラとレーダー網は、自傷行為や死亡インシデントが発生する可能性のある職場で働くことで潜在的に抱える精神的ストレスの軽減に役立っています。 実装後、プロジェクトセーフガードのアラートシステムは自傷行為インシデントの減少に大きく貢献してきました。 この成果は、同様のインシデントの発生を防止できるというセキュリティ担当者の自信にもつながっています。
さらに、どの業務ルールをAxisネットワークカメラに適用するかをMilestoneシステム経由で管理することで、誤検知アラートの可能性が低下しました。 このような運用は、管理担当者のアラート疲労のリスクを最小限に抑えるために役立ちます。つまりアラートが発生した場合、高い確率で本物のインシデントだと考えられるため、管理担当者がすばやく対応する可能性が高くなります。
先日、アラートが潜在的な自傷行為インシデントを阻止した後でセキュリティ管理室を訪ねたところ、セキュリティチームの反応は驚くほど肯定的なものでした。 システムがうまく動作したことが信じられない様子でした。しかも、何度も成功しているのです。 何らかのインシデントを事後に対処しなければならないという精神的なストレスは、大変な負担になることがあります。
壮大な取り組みのはじまり
ロビーナタウンセンターでのプロジェクトセーフガードの試験導入結果を受けて、現在、トゥーンバ、クイーンズランド、キャンベラセンターのグランドセントラルをはじめとするQICの他のショッピングセンターにも同様のシステムが展開されています。また今後に向けて、オーストラリア全土で5つの計画が進行中です。
グランドセントラルのシステムはわずか3か月で実装されただけでなく、導入後すぐにショッピングセンターでの自傷行為やセキュリティ違反インシデント数を減少させました。 グランドセントラルではAxisホーンスピーカーも使用されており、管理室にいるセキュリティチームのメンバーがショッピングセンター内の別のエリアにいる利用者と通話したり、音声警告を発したりすることも可能です。 この機能は、セキュリティ違反にのみ使用されています。
プロジェクトセーフガードを支えるAxisネットワークカメラを設置してから、ロビーナタウンセンターとグランドセントラルの間で少なくとも4件の自傷行為の可能性が防止されました。
「ロビーナは単に買い物するだけの施設ではなく、地域の住民が集まる街の中心地として建設されました。そのためにも、安全な場所にしたいのです。 安全がすべてです。それは、営業時間外でも変わりません」とパーマー氏は言います。
グランドセントラルでは複数のセキュリティ違反や悪用を防止したほか、すでに2件の自傷行為を未遂に終わらせました。