データから得られた知見を利用して行う店舗体験の最適化

あらゆるビジネスでデータの利用が活発化しています。複数のデータソースから判断の基となる知見を収集し、分析し導き出す能力は、収益に直接影響を与える可能性があります。この事実は、ショッピング体験が最もわかり易く、知見が実際に活用されるかによって、顧客を獲得できるか、競合他社に奪われるかの明暗が分かれるともいえます。

オンラインでもオフラインでも、より良い顧客体験を提供することが特に重要です。デジタルユーザーが、サイトへの到着から購入にいたるプロセス上で分析に基づいた各顧客に応じた体験を通じて影響を与えることができますが、一方、実店舗で収集したデータから同じレベルの知見を入手するのは、つい最近まで困難でした。今日では、分析ソフトウェアを搭載したネットワークカメラを利用、データから得られた知見から店舗体験を変革・最適化することで、利便性の高いパーソナライズされた体験を顧客に提供することができます。

 

顧客が何を望み、何を望まないかを理解する

店舗体験の改革は、顧客の要望や、買いたくない原因となる理由を深く理解することから始める必要があります。PwCが最近実施した調査によると、店舗利用の際の懸念事項の上位に挙がる項目は、「在庫切れ」、「値上げ」、「レジ待ち」です。回答者の68%が店舗でのショッピング体験への影響が最も大きいのは製品の値上げだと回答し、在庫切れが42%、レジ待ちが39%となっています。

これら懸念事項は工夫次第で対処が可能で、人員管理技術を利用することにより問題を緩和することができます。ピーク時に十分な数のスタッフを確保すれば明確な利益へともたらされます。レジ待ちを防ぎつつ、接客可能なリラックスしたショッピング環境を保つことができます。

その結果、実際に違いが生じる可能性があります。上記の調査でも、回答者の27%が、知識豊富な店員に相談できることをショッピング体験の最上位に挙げており、店員に相談できることは魅力的なポイントだと回答した人は50%に上ります。これは技術により改善できる点です。たとえばセルフレジを追加設置して、ショッピングを終える別の方法を顧客に提供することができます。店内の混雑を緩和すると同時に、より確かな情報に基づいて商品やサービスに関するアドバイスができるよう、レジ係のスキルを高めることもできます。

品切れも顧客の流出につながる原因になりかねません。毎日決まった時間に手作業で在庫をチェックする代わりにデータ分析で店頭在庫、特に売れ筋商品の減り具合を把握し効果的に補充することができます。

物価の上昇が顧客の購入判断に影響を与えているのは疑問の余地がありません。ほとんどの顧客が安く手に入る事を望んでいます。音声とディスプレイを利用して、パーソナライズしたプロモーションを行い、関心を喚起し付加価値を与えお金を節約できるよう支援することができます。

これまでの実店舗はアナログ管理が主体でしたが、今の顧客は実店舗を訪れた際にも自動化されたソリューションを期待しています。これは、新しいソフトウェアとハードウェアの統合による知見の獲得という店舗側のニーズとうまく合致します。

 

ネットワークカメラ + 分析 = 知見

EC小売企業が利用するウェブデータと同様に、ネットワークカメラに搭載された分析ソフトを通じて店内環境をレベルアップし、顧客満足度、顧客のロイヤリティ化率、売上貢献率の引き上げに必要な行動に関する知見を入手することができます。

店内映像分析の6つの重要な応用分野について見ていきましょう。

  • 来店者数と滞在時間

まず、店舗を訪れたのは何人かを知ることが基本です。客数分析で利用すると、実際の「客足」が正確に把握することができます。これを基に、全体的な顧客体験がどれほど良好かを示す重要な指標である平均滞留時間が導き出されます。

  • 「何人?」だけでなく「誰が、どこで?」

客数分析だけでなく、店内環境における人々の行動を理解することが重要です。たとえば、グループ客の場合、全員が買い物をしているか? 来店客が最も長い時間を費やしている場所はどこか? などを把握する必要があります。

  • ピークの時間帯と場所にスタッフを配置

人件費は最も高額なコストの1つであるため、全体的な収益性を確保するには、スタッフの数を適切なレベルで管理することが重要です。スタッフが少なすぎると、顧客満足度が大きく低下しかねません。買物客不満足な体験をした店舗は二度と利用しない傾向があります。

映像分析で入手した各時間帯別の利用率データを基に、人員配置を行うとともに、顧客が待ちきれずに店を出て行く状況を特定することができます。また、さまざまな場所での顧客滞在時間を測定して、スタッフを再配置するか、相互間的なディスプレイを設置して顧客の質問に答えられるようにすべき場所を特定することもできます。

  • 音声が顧客体験の調整と販売へ至る率で果たす役割

分析機能を搭載したネットワークカメラは貴重な知見をもたらしますが、ネットワークオーディオを追加すると、より動的に行えます。店内で戦略的な場所に設置したスピーカーから音楽を流したり、特定の商品やプロモーションに関するお知らせを行ったり、顧客を支援して購入に向けて働きかけるアナウンスをリアルタイムで行うことができます。このようなメッセージをデジタル画面と組み合わせると、売上げへの影響はさらに大きくなります。これらの機能は、動体検知などによって自動的にトリガーとなるよう設定することもできます。

  • レジ待ち管理は分析機能で単純に解決

不満足な体験をした顧客が店舗から去ってしまうおそれがあることは明らかですが、サービスの提供には、顧客の不満足につながりかねない側面が存在します。誰もが想像するように、購入する品数が少ない場合、なかなか進まないレジ前の長い行列が目に入れば、顧客は何も買わずに店を去り、売上損失が発生します。レジ待ち監視機能はレジを追加で開けるようアラートを出し、並ぶことなく支払いを終えることができるようにするための単純な方法です。

  • 店舗ネットワーク全体から知見を集約

最後に、大規模小売企業の場合、映像分析の重要な利点として、地域、国内、国際的な店舗ネットワークにわたってデータを集約し、比較することができます。各店舗の来店者数、顧客統計情報、ヒートマップ、滞在時間など、さまざまなタイプのデータを集め、第三者製のビジネスインテリジェンス (BI) ダッシュボードで一元化することができます。このような方法で、これらのデータをDX化し知見に富む、具体性のある情報に基づいてビジネス戦略を策定し収益を最大化することができます。

1つ注意すべき点として、上記の様な分析によって判断の基となるさまざまな知見が得られるとはいえ、顧客のプライバシー保護と「EU一般データ保護規則 (GDPR)」 の遵守は決定的に重要です。そのため、個人の身元を保護するマスキング技術を利用して、匿名的にデータを収集する必要があります。これを怠ると、法的にも財政的にもブランドイメージの面でもマイナスの影響が生じ、収益に悪影響が及ぶおそれがあります。

 

究極の利便性を新技術で実現

新技術をスマートに利用することにより、競争力のある店舗体験を改善し提供することができます。これは、顧客のニーズや不満に、接客で対処することで実現できます。たとえば、セルフレジやモバイルレジの技術を利用して、買物客の来店から退店までの行動をサポートできますが、この分野の分析機能を搭載したカメラを統合することにより、必要に応じて、顧客をサポートするようスタッフにアラートを送ることができます。

顧客が抱えている問題を理解し、優先的に対処すれば一貫性のある質の高い店舗体験を提供でき、ブランドロイヤリティが上がりリピート客となるでしょう。

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