自律型ロボットからリアルタイムパーソナライゼーションまで – 2023年以降の小売業の主なトレンド

ネットショッピングが普及したいま、小売業界は、自動化、ソーシャルエンゲージメント、高度なパーソナライゼーションを特徴とする第三の転換期を迎えています。「Radical retail 2030 (激動の小売業界2030)」レポートによると、消費者やコミュニティとの共創が活発化しており、物理的世界とデジタル世界が融合した、「物理的」な顧客体験がバーチャルな「メタバース」の中で姿を現すと予測されています。

同時に、デジタル技術を大規模に導入し、より持続可能な事業実現の要望があります。ここでは、現在と今後の小売業界で予測される主なトレンドを紹介します。

 

リアルタイムパーソナライゼーションによる顧客ニーズ把握

小売企業は、購買傾向と顧客属性を基にリアルタイムで顧客に提案を行う能力を高めています。AIを利用した顧客とのやり取りは新たな動きであり、パーソナライゼーションの改善と売上増を目指しています。

データ解析分野をリードするGoogleは、この種のテクノロジーはすでに導入しています。AIによる購入提案は期待通り的確なパフォーマンスを実現します。これは、1) 過去の閲覧情報とホームページ上での動き2) 購入履歴や返品履歴など全体的な顧客情報、の2つの要因に基づきます。これら情報を分析して、オンラインショッピングを迅速化して関係を深めるのに役立つ、洗練された顧客プロファイルが作られます。

実店舗では顧客がどんな商品をカゴに入れたか、戻したか、あるいは、顧客が店舗を訪れたかでさえ、把握するのは非常に困難です。物理空間におけるデータの収集は、小売企業にとって重要なトレンドになっています。この場合分析機能を搭載したネットワークカメラを使用して店内顧客行動を把握します。たとえば、顧客が購入を取りやめた商品、特定のエリアで費やした時間、最終的にレジまで持っていった商品に関する情報を利用して、シームレスなゾーニングや陳列方法の判断に役立てることができます。

在庫管理に関しては、売れ筋製品が常に陳列されてることで役割が果たされます。SymphonyIRI Groupの調査によると、ヨーロッパ各国の日用消費財の品切率は平均8.3%であり、小売業界全体で年間40億ユーロ (35億ポンド) 以上の損失が生じていますが、幸いにも、AIにより在庫レベルをリアルタイムで監視することができます。実際、Google Cloudの新しい陳列棚確認用AI技術では、同社のデータベースと洗練されたアルゴリズムに加えて、高性能なネットワークカメラを併用して何十億もの商品をすばやく認識し、陳列棚に並べるべき商品が確実に並ぶようにします。

 

24時間ハイブリッド型ストア

Eコマースが普及しても、実店舗がショッピング体験の重要な部分であることに変わりはありません。Salesforceが行った調査によると、顧客は、商品に触れて品定めができる、その場で購入を済ますことができる、送料がかからない、ショピング体験が楽しめるといった理由から、実店舗で買い物を行う価値を認めています。さらに、店舗は商品を流通させるための効果的な物流ソリューションです。

従来、店舗は営業時間によって利用が制限されていましたが、小売業界では、全面的または部分的な自律型オペレーションへの転換が始まっています。この種の店舗は多くの場合、映像、分析、音声を統合したソリューションなどの高度なテクノロジーによって、24時間いつでも安全に利用できるようになっています。都合のいい時間に店舗を訪れることができるため、利便性が高まるだけでなく人手不足など労働問題の解決策にもなります。

自律型店舗と聞いて想像がつくように、お客様の安全とセキュリティ、さらに、万引きについての懸念があります。異常徘徊行動を監視したり、暴力行為や侵入を示す音を検知できるセキュリティソリューションの導入により、事件の発生時にすばやく対応して重大化を防ぎ、安全な環境を維持することができます。

 

物流の自律化

顧客体験の中で最も面倒で費用がかかる部分の一つが商品出荷です。事業者から顧客までの最後の配送区分である、いわゆるラストワンマイル配送は、配送コストの総額の53%を占める場合があります。遅延や延期は顧客のショッピング体験に悪影響を及ぼし、不満足度を高めるおそれがあります。そのため、物流企業では、自律型物流の投資が増えています。自律型物流とは、サプライチェーン内で人が全く関与しないか、最小限しか関与せずに物流を処理できるシステムを意味します。その結果、配送可能な時間帯が広がり、お客様の利便性が向上するとともに、スタッフ不足や労働時間による制約がなくなるメリットがあります。

さらにサプライチェーン上では倉庫や流通センターでの自動化の採用が進んでいます。無線自動識別 (RFID) リーダーを利用したアクセスコントロールから、荷物を自動的に追跡して梱包と出荷が正しく行われたことを確認するネットワークカメラまで、効率化を図り配送実績を改善する上で、テクノロジーが極めて重要な要因になっています。

 

消費者の意思決定を左右する持続可能性と透明性

より広範な社会問題を反映して、消費者の支出行動に変化が起こっています。経済的に不確実な時代を迎え、以前よりもよく考えた上で支出が決定されるようになり、レンタル、修理、物々交換、中古品市場を選ぶ消費者が増えています。それ以外にも、消費者が生産コストや材料の調達先について詳しく調べる傾向が強くなっています。このように、消費者がじっくりと考えるようになったことで、企業がデータを利用して透明度を高める必要があります。

消費者がサプライチェーンに関する情報を求めるのは、企業ネットワークの中心に持続可能な価値観が存在することを確認するためだけではなく、自分のデータが倫理的に安全に取り扱われているという安心感を求めるからです。サプライヤーの選定や、データプライバシーとセキュリティに関する企業慣行を率直に示すことで、消費者との関係が深まります。

 

小売業の進化の中枢を担うテクノロジー

小売業界は新たな変化の時を迎えています。顧客体験のさまざまな部分で変化を起こすため、自動化、ロボット化、AIソリューションが次々と導入されています。この記事で紹介した多くの変化は、店内体験改善、顧客ニーズ予測、摩擦削減と損失防止を焦点としています。意思決定の基となる完全な可視性や有益なデータを提供する統合型のテクノロジーを店舗に導入して初めて、これらの目標が達成されます。

目立った変化を起こすことに積極的な、革新的な小売企業では、すでに巨額の投資を行っています。実際、多くのアナリストを擁するIHL Groupが行った調査によると、小売企業がテクノロジーの購入に費やした金額は、2020年から2022年までの間に25%増加しています。2023年も同じ傾向が続き、IT支出額はさらに4.3%増加しています。

問題は、顧客のニーズに対応する適切なテクノロジーの選択です。そのためには、自社の事業運営を総合的に、率直に評価し、どの部分を改善すべきかを判断する必要があります。そうすることで、競争が熾烈な環境においても顧客の愛着や支持を勝ち取ることができる変革を実現することができます。

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