小売ビジネスの損失防止に関わる最新のテクノロジー

小売犯罪が増加する傾向を示しています。昨年窃盗によって小売企業が被った損失は、英国だけでも総額9億5,300万ポンド(約1000億円)です。この数字は長期の増加傾向を裏付けるものであり、同地域では2016~17年以来損失額がほぼ2倍になっています。他にもオーストラリアやニュージーランドでも同じ傾向が見られ、小売業の窃盗被害は20億ドル以上(約3000億円)に達しています。

窃盗や不正行為は、小売企業に重大な財政的影響をおよぼすおそれがあります。ビジネスを守り収益性を改善するにはどのように損失を防止すればよいでしょうか?

ここでテクノロジーの出番です。現在テクノロジーは小売変革の中心に存在しており、事件や窃盗行為の映像情報を提供する監視ソリューション、店内での出来事に関するデータ知見と分析、音声機能による抑止力の強化など、損失防止に役立つソリューションが数多く存在します。こうしたテクノロジーは不審な動きを検知し迅速な対応を可能にするとともに、事件の再発を防止して収益性の向上につなげることを目標に設計されています。

 

AIと機械学習による小売経営の変革

近年、小売業に注目すべき変化が起こっています。人手不足の深刻化に加えて、業務効率と生産性を高める必要性から、自動化やAI対応のテクノロジーへの投資が活発になっています。その結果、セルフレジやセルフサービス型のオプションが小売店で広く利用されるようになりました。さらに一歩進めて自動決済などレジを完全に廃止した店舗もあります。

実際、調査によると、「無人」店舗市場は今後数年間で著しい成長が見込まれています。2019年に6,748万ドル(約100億円)だった市場規模が2027年には16億4,032万ドル(約2400億円)に達すると推定されており、前述の新しい小売業モデルが着実に普及しています。ただし、この店内作業の自動化へのシフトによって、スタッフの作業負担が軽減される一方損失防止、安全、セキュリティに関する新たな要件が必要になります。適切なソリューションがなければ、無人店舗とセルフレジが小売企業に多大な損失をもたらしかねません。

このような損失を軽減するには、スマートなビデオ監視システムが必須です。最新の小売業では、AIを活用する監視カメラとセンサーによって、リアルタイムデータから店舗に関する詳しい知見が得られ、リスクの特定、人間の目には見えないパターンの発見、迅速な分析を行うことができます。このようなスマートソリューションは、不審な動きを検知し、窃盗や不正行為を未然に抑止する上でも有効です。リアルタイムデータを利用することで、何らかの矛盾や不審な動きがあれば保安担当チームがすばやく検知し、より効果的、効率的に対処することができます。このリアルタイムインテリジェンスは、脅威へのすばやい対応、事件の調査の迅速化、より効果的なセキュリティ対策を実現します。

インテリジェント技術は、今この瞬間に起こっている不審な動きの発見に役立つだけではありません。AIが繰り返される窃盗事件など過去の事件から学習し、パターンを認識して潜在的な容疑者を特定することさえ可能です。そのため小売企業は、今後の犯罪を防ぐだけでなく、犯罪者に責任を負わせることも可能になります。機械学習を利用した小売セキュリティの増加は、小売業において、AIによる損失防止対策の変革が生じていることを示しています。監視システムにおけるAIの利用は、最終的により的確なビジネス判断と長期的な収益の増加につながります。

AIにはさまざまなメリットがありますが、データの収集と分析を行うすべての活動の例に漏れず、導入に先立ってプライバシーや潜在的なテクノロジーの誤用をめぐる倫理上の懸念事項について考慮することが重要です。この問題は今なお進行中で、絶えず議論が進化しているため、小売ビジネスに恩恵をもたらす監視システムの改変に取り組む際には、十分に考慮する必要があります。

 

統合型ソリューションで小売犯罪に対処

カメラ、音声、センサー、アクセスコントロール、ビデオ管理システム (VMS)、分析を含む統合型ネットワークソリューションが、小売業におけるセキュリティと損失防止プログラムの基盤になり続けています。このようなソリューションでは、個々の店頭 (POS) 取引をビデオと結び付けることができるため、通常とは異なる取消、返金、交換などについて視覚的に調査を行い、万引きや内部犯行によって商品が盗まれ、在庫数が減少するシュリンケージを減少させることができます。商品の返品についてもビデオ撮影を行い、米国の小売企業において昨年1年間で推定1,010億ドル(約15兆5千万円)の損害が生じている返品詐欺の問題に対処することもできます。

リスクの高い場所で不審な動きを検知、抑止するために統合型ソリューションを利用する事例は、以下のように多数存在します。

  • セルフレジでのスキャン忘れ、スキャン逃れ – スキャンされなかった商品を映像分析で検知し、アラートを出して買物客にもう一度スキャンするよう促すことができます。店舗の管理部門にアラートを送信することもできます。
  • カートに入れた商品の店外持ち出し – 買い物客がカートに商品を積んだまま支払いせずに店外に出ようとした場合、映像分析とアラートを使用して、レジまで戻るよう指示することができます。
  • 顧客不在の状態での取引の発生 – レジにセンサーを取り付け、レジのドロワーが開けられた時点で分かるようにすると、センサーがカメラと通信し、顧客の存在を検証することができます。レジのドロワーが開かれたにも関わらず、顧客がいないとカメラが判断した場合、管理部門にアラートを送信することができます。
  • 高額商品の監視 – カメラと無線接続された陳列ケースの覆いや扉が開けられると、センサーから信号が送られ、カメラが陳列ケースにズームインします。また、店舗スタッフが読取器にカードをかざして陳列ケースのロックを解除すると、時刻と担当者名が記録されます。この2つの設定により、いつ誰がアクセスしたかが明らかになり、映像としての証拠も入手することができます。
  • うろつき – 音声機能とアナリティクスを統合することで、不審な動きに直ちに対処することもできます。たとえば、特定の場所で異常に長い時間を費やしている買物客がカメラで検知された場合、スタッフや保安会社にアラートを送信し、顧客の支援に当たらせることができます。同時に、スタッフがお手伝いに向かっているのでその場で待つように伝える、抑止力となるメッセージも送信できます。

店舗フロア以外の場所でも、盗難が起こる可能性があります。納入場所は特に高リスクです。この問題に対処するには、インターコム、QRコード、ナンバープレート認識を使用して、正規の納入業者かどうかを検証することができます。納入場所へのアクセスをリモートで管理し、ウェアラブルカメラや固定カメラを使用して、注文した商品が正しい数量納品されているかを視覚的に確認することができます。分析結果を活用し敷地内の車両を識別することもできます。注意を要する車両が検知された場合にはエッジ分析により、保安要員や警察など適切な担当者にアラートを自動送信することができます。

統合型ネットワークソリューションは一定の事象を識別してアラートをトリガーし、必要に応じて自動または手動で対応できるようにすることで小売ビジネスの運営を支えます。これらの機能はすべて、損失防止対策を強化し小売企業の収益性の向上に貢献します。

 

損失防止対策を強化し、小売ビジネスの未来を守る

損失の削減、業務の効率化、プロセスの最適化は収益性の向上に直結します。年月の経過とともにさらに新しい用途が出現するため、さまざまなソリューションをまとめることができるオープンなプラットフォームを選ぶことが重要です。このように店舗における俊敏性を維持し、ニーズの変化に対応しながら今後も収益を最大化することができます。

Axis Communicationsの小売向けソリューションの詳細については、こちらをクリックしてください。

小売業