2019年のテクノロジートレンド: Axisとセキュリティ業界に影響する6つのトレンド

来るべき年にAxisとセキュリティ業界全体に大きく影響すると思われる重要なテクノロジートレンドについて語るのが毎年恒例になっています。未来の予測は決して簡単ではありません。新しいテクノロジーや、より広範な問題が長期にわたって重要な意味を持つことには疑問の余地はありませんが、私たちはむしろ、近い将来に説得力のある使用事例になると思われる分野に強い関心があります。

そのため、2019年について考察するにあたり、重要なトレンドのいくつかは2018年の初めにとりあげたトレンド(英文のみ)の続きとして扱っています。実際、ここで説明する6つのトレンドのうちの4つは12か月前に書かれたものと同じです。これらの分野では、来年へと続くと思われる勢いが過去12か月にわたって見られました。同じ話題を繰り返すことになりますが、ご容赦ください。

1. 人工知能

何かに注意を向けたり、議論をしたりする際に、当然のように沸き起こってくるのが、人工知能 (AI) があらゆる業界のあらゆる分野で根本的な変化を引き起こすという考え方です。Gartnerのハイプサイクルによると、実証可能なAIアプリケーションと、関連する機械学習(マシンラーニング)、深層学習(ディープラーニング)が不在であることは、やや皮肉な見方をすれば、過剰な期待の頂点か、幻滅の谷間のいずれかを示しているように思えるかもしれません。言うまでもなく、実際の進捗状況は業種や応用分野によってさまざまです。特に医療、中でも癌の検知など、AIがすでに著しい成功を収めている分野もあります。他の分野では、より安定的な進歩が見られます。ビデオ監視もその一つです。

この業界では現在、マシンラーニングやディープラーニングが主にビデオアナリティクスで利用されていますが、将来的には、他のさまざまなアプリケーションや製品の重要な要素になると予想されます。AIは、年月の経過とともに、ソフトウェア技術者が日常使うツールになり、多くの環境やデバイスに組み込まれるでしょう。しかし、やはりAIの応用を推進するのは説得力のある使用事例であり、テクノロジーそれ自体ではありません。セキュリティ監視の分野でも、新たに出現するテクノロジーに過剰に期待したい誘惑にかられます。ビデオアナリティクスにおけるAI、特に現在応用されているディープラーニングのいくつかについては、期待にたがわぬ利点が得られるのは確かです。Axisは、AIとディープラーニングを、あらゆる新しいテクノロジーと同様に、強力で、信頼性の高い、顧客の現実の問題を解決するテクノロジーとして導入することをお約束します。

ディープラーニングは、トレーニングフェーズ、実行フェーズの2つから成り立ちます。トレーニングでは、膨大な処理能力、データと長い時間が必要なため、サーバーやクラウドで実行するケースがほとんどで、追加のトレーニングである微調整は、エッジで行うことになると考えられます。これは、次項で説明するトレンドに直接関係します。「トレーニング済み」のデータが必要な実行フェーズは、システムのあらゆるレベルで実行することができ、アプリケーションに必要な処理能力と、どこまでスピードが重視されるが問題になります。

研究は日々、着実に進められています。来るべき年も、急進的な変化というよりも、少しずつ段階的な進展が見られるはずです。

2. クラウドとエッジコンピューティング

GartnerのハイプサイクルにおいてAIがまだ初期段階だとすれば、クラウドコンピューティングは、生産性の台地には達していなくても、そこに向かう確固としたテクノロジーだということは否定できません。何らかのレベルでクラウドコンピューティングを利用していない組織は、官民を問わず、ごく少数でしょう。インフラ全体をクラウドモデルに移行した組織も数多く存在します。

とはいえ、クラウドコンピューティングの基盤は、データセンターで実行される集中型コンピューティングです。コネクテッドなIoT (モノのインターネット) デバイスの爆発的な増加に伴い、生成されるデータの量も急増します。かつてないほどのキャパシティを持つデータセンターが次々と建設されても、津波のように押し寄せるデータの量は侮れません。ビデオ監視などの分野では、この問題は特に決定的に重要です。必要なストレージ容量や帯域幅を削減するテクノロジーが開発されているにも関わらず、データの量は依然として膨大です。

そこで浮上してくるのが、エッジコンピューティングの利点です。簡単に言うと、エッジコンピューティングでは、その名前が示すように、ネットワークの「エッジ」、すなわち、データがセンサーで収集されるのに近い場所で、データセンターに送信される前に、より多くのデータ処理を行います。ある種のセンサーでは際立つ利点が得られますが、これは、処理のスピードと、取得したデータに対して実行できる処理によって決まります。たとえば、自動運転について考えてみましょう。エッジコンピューティングを利用して、車両の内部でデータを取得して処理を行わなければ、クラウドデータセンターとの通信に遅延が発生します。わずか数ミリ秒の遅延でも、車両が事故を避けることができるかを左右する可能性があります。

セキュリティビジネスにおいては、エッジコンピューティングは、カメラ自身によるデータの処理を意味します。自動車事故の防止ほどドラマティックではないかもしれませんが、やはり大きなメリットがあります。まず、カメラの内部で初期的なデータ処理を実行することで、データの伝送と保存に必要な帯域幅が著しく減少します。さらに、データを匿名化、暗号化した状態で送信することが可能になり、セキュリティやプライバシーに関する懸念が解消されます。

クラウドとエッジコンピューティングは二者択一の問題ではありません。この2つをバランスよく利用することで、最高のメリットが得られます。

3. パーソナライゼーションかプライバシーか

2018年は、特に個人情報をめぐるデータプライバシーに関する社会全体の意識が最高点に達した年として記憶されるかもかれません。公共部門や民間企業においては、EUの一般データ保護規則 (GDPR) の出現によって、ビデオ監視で撮影したデータを含む個人情報の収集、保存、共有、利用が、かつてないほど厳密に監視されるようになりました。一方、消費者としては、Facebookに関係する諸問題のほうが重大だったのではないでしょうか。Facebookの件をきっかけに、オンラインで開示した個人データの扱われ方が強く意識されるようになっています。

今日の私たちは、意識する、しないに関わらず、大量の個人データと引き換えに価値あるオンラインサービスを享受する生活を送っています。実際、Facebook、Amazon、Googleなどの企業は、個人データを利用し、高度なパーソナライゼーションを行って、サービスの価値を高めていますが、有益なパーソナライゼーションとプライバシーの侵害の境界線が踏み越えられたように感じている人が少なくありません。家族の会話を家庭向け音声アシスタントが傍受しているとの噂が、このような不安に油を注いでいます。

こうした状況から、企業と顧客の間の信頼が、ますます重要な有形資産になりつつあります。コンサルティング企業Accentureが行った最近の調査では、利害関係者の信頼と収益との間には相関関係があることが確認されています。プライバシーと個人データの利用に対する企業のアプローチをめぐる懸念は、今後、ビジネスへの信頼に非常に大きく影響するようになると予想されます。

4. サイバーセキュリティ

毎年のように話題の中心になり、絶えることなく懸念されている問題が果たして「トレンド」と呼べるのかは定かではありません。いずれにせよ、今年あらゆる業種で悪影響を及ぼしたさまざまな問題について、サイバーセキュリティに言及せずに論じることはできません。前述の話題とも関連しますが、企業と顧客、株主との信頼関係を壊す一番の近道は、サイバーセキュリティの侵害です。British Airwaysの事例を見れば、一目瞭然です。

サイバーセキュリティの問題は、今後も解決されることはありません。サイバー犯罪者と、その背後にある国家組織は、脆弱性を発見し、悪用する行為を決してやめないからです。これらの集団は、信じられないほど豊富な資金に支えられ、業界規制を順守しなければならない一般企業よりもはるかに速いスピードでイノベーションを達成します。コネクテッドデバイスが増え、潜在的な脆弱性や安全でないネットワークエンドポイントが急増する状況において、攻撃はますます巧妙化しています。

最近、注目を集めるようになった脆弱性の一つがサプライチェーンです。サプライチェーンにおける適切なサイバーセキュリティ慣行の欠落や、意図的な悪質行為によって、ソフトウェアとハードウェアの両面からサイバーセキュリティが侵害されるおそれがあります。製品の出所がかつてないほど重視されているため、メーカーは、サプライチェーンのあらゆる部分で適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

5. 環境にメリットをもたらすスマートテクノロジー

オフィスのエネルギー効率を高め、結果的に環境にプラスの影響を与えたいと考えている企業にとって、ビデオアナリティクスの利用がプランニングツールとして有効であることは、すでにご紹介しました。さまざまな形式の出力用に調整された、非常に感度の高い人工の「鼻」と言うべき新しいタイプのセンサーを利用して、企業のあらゆる拠点における環境への影響を、より正確に測定することができます。サーマルイメージングを利用して、エネルギーが浪費されている場所をピンポイントで特定することもできます。

このようなセンサーの利用が意識の向上や理解に貢献し、是正措置の可能性を高めている重要な分野の一つが大気品質です。建物の内部でも外部の都市環境でも、健康への悪影響やそれにまつわるコストが、今まで以上に大きな問題になっています。世界中どこでも、この問題に対処する上で、スマートセンサーが中心的な役割を果たすと予想されます。

この種のアプリケーションは、効率化とコスト節約の両面から、さらに、健康面でのメリットを通じて、企業に付加価値を与えるだけでなく、企業独自の環境目標や持続可能性の目標の達成に貢献します。

6. センサーの統合によるスマートアクションの促進

前述のセンサーはどれも、単独で使用しても優れた利点が得られますが、Axisが2019年に向けて自信を持って予測する最後のトレンドは、センサーの統合による「スマート」アクションの促進です。

たとえば、スマートシティでは、フェンスに接続された動体センサーによってカメラをトリガーし、カメラを通じて運用指令センターにアラームを送信して、適切な対応を迅速に行うことができます。また、環境センサーによってビデオカメラやサーマルカメラを起動し、火災や漏水の発生箇所をすばやく特定し、アラームを送信することで、より迅速で効果的な対応が可能になります。熱感知、動体検知、大気品質、ビデオなど、広範囲に及ぶセンサーは、無限の組み合わせが考えられ、得られる潜在的なメリットも無限大です。

テクノロジーの開発は急ピッチで続けられており、そのペースは加速しています。新しいトレンドやイノベーションは、その可能性に目を奪われがちですが、一つひとつのトレンドやイノベーションを、現実での使用を踏まえて考える必要があります。これが、Axisのテクノロジートレンドとその応用に関する一貫した考え方であり、2019年も、新しいテクノロジーをより有益な形で市場に投入するエキサイティングな一年になるでしょう。