信頼性の高い転倒検知を実現する5つの戦略

世界保健機関 (WHO) によると、故意ではない偶発的な傷害死亡の原因として、世界で2番目に多いのが転倒です。年間の転倒事故3,730という驚くべき数字を見ると、医療上の注意が必要とされるのも当然です。転倒のリスクとして、少し例を挙げるだけでも、環境の危険性、疾病、神経系や精神の状態、筋肉の衰え、視力の低下、薬物など、広い範囲に及ぶ要因が関係しています。

確かなことは、転倒のリスクは年齢とともに高くなることです。アメリカ疾病予防管理センター (CDC) の試算によると、毎年、3人に1人の割合で高齢者が転倒しています。つまり、統計的には、自分自身または近親者の誰かが転倒によって重傷を負った経験があることになります。

増加する高齢人口と医療費の高騰を背景に、リスクの高い人の転倒の検知 (さらには防止) を目的とした新しい研究やテクノロジー開発が活発に行われています。転倒検知の5つのトレンドと課題を確認してみましょう。

1. 物理的モニタリング

医療提供者が定期的に巡回して高齢の患者や居住者を診察することは、目新しいトレンドではありませんが、病院、高齢者居住施設、在宅医療において今でも一般的に行われているため、言及する価値があります。

どの程度まで物理的に介護者が存在するかは、転倒のリスクに応じて異なります。週ごとの間欠的な訪問の場合もあれば、24時間患者に「付き添う」場合もあります。優先度と対価はトレードオフの関係にあります。物理的に同じ場所にいる時間が長いほど、より早く転倒を検知することができ、おそらく防止することも可能になりますが、非常に集中的にリソースを投入しなければならず、モニタリングされる側にとっては侵害的です。一方、たまに訪問するだけでは、患者が転倒してから何時間も、場合によっては何日も重傷を負ったまま放置されるリスクがあります。

睡眠の中断と、認知症など、転倒に関係するある種のリスク要因の増大の相関関係も多くの研究で証明されているため、ベッドで安全な状態で眠っている高齢者を健康診断のために起こすのは、実は非生産的だという考え方も成り立ちます。

2. ウェアラブルな転倒検知器

最先端の科学技術を応用した市販のソリューションの一つであるウェアラブルな転倒検知器は、高度なアナリティクスに加えて、三軸加速度計とジャイロスコープ技術を使用しています。具体的には、身体の各所に装着したセンサーを使用してユーザーの足取りや方向を測定し、高度なアルゴリズムによって転倒に似た動きが感知されると、音を鳴らすかアラームを送信します。

ペンダント型、腕時計型、メガネ型、腰に巻くベルト型、これらの組み合わせなど、さまざまな選択肢があります。どの製品も、ユーザーが転倒して動けなくなると第一応答者に自動的にアラームを送るように設計されており、ほとんどの製品がかなり効果的に動作します。ユーザーが転倒しないようにするため、姿勢を調整するよう、ユーザーに先行的にアラームを出す製品もあります。

どのウェアラブル機器にも言えることですが、必ず装着されるという保証はありません。実際、高齢者がセンサーの装着を忘れるのはよくあることですし、多くの人がセンサーの装着を嫌がります。また、シャワーを浴びるときなど、そもそも転倒のリスクが高い場合にセンサーを装着するのは実用的ではありません。

身体に装着するセンサーは、誤認アラームも起こりやすく、最も進歩したアルゴリズムでも、勢いよく座る動作や手で蠅を叩き落とす動作を転倒と区別するのは困難です。

3. インテリジェントホームモニタリングシステム

AIを応用した高齢者モニタリングのもう一つの興味深い例として、Zigbeeワイヤレスメッシュを使用して通信を行うホームオートメーションシステムに接続された家電製品の使用状況を入手し、アルゴリズムで分析するソリューションがあります。このシステムは、家電製品の通常の使われ方を「学習」し、変則的なパターンが見られた場合にアラームを発生させます。

例えば、老人が朝のコーヒーをいつもの時間に淹れたかどうかだけを基準にしてアラームを発生させても、必ずしも重大な転倒事故が発生したとは限りませんが、コーヒーを淹れなかったことと他の変則性が組み合わされると、転倒と判断できる場合があります。不運にも夜、就寝する前に転倒した状況では、ホームオートメーションソリューションが毎朝の習慣との変則性に気付くまで、何時間も床に倒れたまま放置されるおそれがあります。

そのため、このソリューションは、転倒検知システムとして第一に選択すべきものではないかもしれませんが、冗長性を確保するためのレイヤーとしては妥当です。また、ホームオートメーションシステムが既にある場合は、このソリューションを利用して新たなメリットを引き出すことができます。

4. 圧力センサーとモーションセンサー

病院や高齢者施設では、モーションセンサーと圧力センサーを組み合わせてベッド、椅子、便座、床などに配置し、高齢の患者や入居者の動きを感知して介護者にアラームを送る仕組みがよく使われています。これらのセンサーの多くは、警報音を発生させたり、録音済みメッセージを流して、介護者が来るまでその場で動かないように警告します。

これらのセンサーは、患者や入居者の動きを高い信頼性で検知しますが、検知した動きが必ずしも転倒というわけではありません。実際、ユーザーがほんの少し位置を変えただけでも誤認アラームが発生する場合があります。

5. ビデオ監視

病院、高齢者居住施設、さらに住宅でも、ビデオ監視による高齢者のモニタリングが注目のトピックとして活発な議論を呼んでいます。どちらかといえば単純なクロスライン検知から、より高度な加速度、位置アルゴリズムまで、広範囲に及ぶビデオアナリティクスを使用して、前述の方法と同様に信頼性の高い転倒検知が行えます。

第一応答者が離れた場所から瞬時にアラームを目で確認できるのが、転倒検知におけるビデオ監視テクノロジーの明らかな利点です。リソースプランニングの観点から考えると、一人のスタッフで何百人、場合によっては何千人もの人々を効率よくモニタリングでき、転倒が確認された場合のみ、第一応答者が現場に急行します。モニタリングされる人は、不必要に煩わされることもなく、安心感を得ることができます。

ビデオ監視には制約もあります。そのほとんどは、画像のディテールと照明の問題に関係し、転倒検知の信頼性に影響します。さらに、ビデオ監視をめぐって間違いなく最大の議論を呼び起こす、データ保護と患者のプライバシーの問題があります。

より手頃な価格の高解像度サーマルテクノロジーが登場しており、医療機関では、たとえ完全な暗闇でも一人一人の位置をはっきりと確認することができます。さらに、サーマル画像は、新しいEU一般データ保護規則 (GDPR) に先立ち、患者のプライバシーを完全に保護するテクノロジーです。

マルチセンサー技術がもたらす最高の保護能力

転倒検知、転倒防止の100%有効なソリューションは存在しませんが、利用できるセンサー技術を組み合わせるとシステムの信頼性が大幅に向上することは、ほとんどの専門家が認めています。また、高齢者の間では、自立した生活を長く続けるための手段として、モニタリングを受け入れる機運が高まっています。

サーマルビデオモニタリングと、オープンプラットフォームに基づくその他の転倒検知システムを統合することによって、より信頼性の高い転倒検知、防止を実現する、貴重な冗長性が得られます。さらに重要なポイントとして、このような統合システムは、高齢者、その家族、介護者に安心感を与えます。

サーマル画像テクノロジーが効果的な転倒検知を実現する仕組みをご覧ください。

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