拡張現実とビデオ監視の連携

空想から始まったものが急速にイノベーションへと発展し、一部の「仮定の」シナリオを現実のように活性化させるレベルに達しています。さまざまな業界で、ビデオ監視に拡張現実 (AR) を統合するメリットを実体験する様子が見られるようになりました。

現在、さらに多くのARアプリケーションが市場に出現し、使用事例が増加しています。今までの進歩を振り返るとともに、「よりスマートで安全な世界」の実現というAxisのビジョンにつながる今後の可能性に注目するには絶好のタイミングです。

 

拡張現実の簡単な基礎知識

本題に入る前に、ARテクノロジーとは何かについて説明しておきましょう。ARとは、大まかには、「ライブ映像にテキストや画像などの情報を重ね合わせ、ユーザーに詳しい見識を提供する能力」と定義することができます。この情報は、ライブ映像の表示に用いるモニターやモバイル機器、用途によってはスマートグラスやヘッドセットなど、さまざまなデバイスで表示することができます。

ARと混同されやすい仮想現実 (VR) との違いも明確にしておきましょう。VRでは、ヘッドセットを用いる場合が最も多く、着用した本人が実際に物理的に存在しない環境や状況にいるような、一人称の視点を実現します。

VRは特定の環境にいるような錯覚ですが、ARでは、実際にどこかにいて現実の光景を見ながら、その光景にオーバーレイ表示された追加情報を見ることができます。

コンシューマー環境におけるARのシンプルな利用例を見てみましょう。たとえば、見知らぬ町を訪れて通りを歩くとき、現実の環境を見ながら、AR対応のスマートグラスやモバイル機器によって、目的地への道案内や興味深い場所など、見ているものに関する有益な情報が表示されます。「この町で最も評価の高いレストランを教えて」といった音声コマンドを発すると、ARは直ちに反応して、オーバーレイ表示される情報を変更します。

すでにAxisのパートナー数社が、ライブビデオに情報をオーバーレイ表示することができるアプリを提供しています。CamStreamerは、人気の高い動画サイトにAxisカメラの映像をライブストリーミングできるアプリを開発しました。同社のCamOverlayアプリを使用すると、ライブビデオにグラフィックや情報を追加することができます。この例はプラハ市内からのライブ配信ですが、ライブカメラを使ってプラハのさまざまな景色を映し出し、景色に合わせて変化する情報をオーバーレイ表示しています。

ARは、ユーザーが実際に見たり、聞いたり、触れたり、場合によっては、匂いを嗅いだり、味わったりしたものに関する価値ある情報に手を動かさずにアクセスできる、「非常に強力な見識」になる可能性があります。

こう考えると、想像力が自由に動き出すのを感じます。

 

今日のビデオ監視におけるAR

最新のネットワークビデオ監視カメラでは、きわめて高品質な画像が得られます。これらの画像は単独でも相当な価値があり、フォレンジックレベルの詳細さを備えた現場のライブ映像に基づいて、オペレーターが状況を監視し、評価することができます。事件や動きにリアルタイムで対応し、必要に応じて、第一対応者にアラートを送信することもできます。

オペレーターが現場の第一対応者に指示を出す状況で、映像に付加的な情報をオーバーレイ表示することによって生じるメリットは明らかです。一部のAxisカメラには、ライブ映像に町名や方位をオーバーレイ表示して正確な方向を示すことができる方向補助機能が搭載されています。

ほんの数秒の差が決定的な違いを生む状況では、他にも多くの有益な情報がARオーバーレイで提供できます。たとえば、最も近いAEDの設置場所を直ちに把握して、現場の人々をライブ音声で誘導することができれば、人命を救う拡張機能になります。

リモートの指令センターやローカルのモバイル機器を通じて、建物の見取り図や、入口や非常口などの情報が第一対応者に提供されれば、建物からの避難行動や内部に閉じ込められた人の発見を迅速に行うことができます。最も効率的なルートで安全に退避できれば、事件発生時のリスクの増大を抑えることができます。この場合も、リモートの制御室でライブ映像にオーバーレイ表示される情報や、ローカルのモバイル機器に配信される情報を利用して対処することができます。

 

新たな用途の開拓

ビデオ監視へのARの統合については、今までの急速な進歩のおかげで、まったく新しい使用事例が出現しています。

たとえば、すでに一部の地域で、消防などの救急サービスにライブ映像が重要な見識をもたらしています。火事の現場に向かう途中、消防車に搭載したPTZビデオ監視によって常にその現場を捉えることができ、準備中の消防士に向けてライブ映像がストリーミングされます。この映像を強化して、建物内に人がいる可能性や、考えられる位置などの情報を提供できます。

将来の可能性として、警察では、センサーとしての位置付けで、設置済みの監視カメラや装着式のカメラから集約したデータや、携帯電話の位置データを利用して、ビデオに情報をオーバーレイ表示することができます。このような文字による指示に従って、救急要請の通報に使われた携帯電話の現在位置を特定し、窮地に陥った人の所に迅速に駆けつけることができます。事故の発生現場に急行中の医療スタッフや救急医療隊員がARを利用して、現場にいる人々を支援したり、現場の監視カメラからのライブフィードを利用して必要な準備を整えたりすることも、決して空想の域を出ないわけではありません。

 

救急サービス以外にも

公共の安全の分野でARが望ましい重要なインパクトを及ぼし得る、非常に説得力のあるシナリオをいくつかご紹介しましたが、それ以外の分野でも、さまざまな使用事例が登場しています。

たとえば工場では、ビデオ監視だけでなく、温度センサー、空気品質センサー、煙検知器など、工場全域に設置されたコネクテッドセンサーのデータをスタッフが受信し、問題が発生した時点で、鮮明なライブ映像を見ながら、すばやく対処することができます。

さらに、温度の急上昇、境界侵犯、大声などの騒音に関連するアラートが発生すると、ビデオモニターにライブ映像が映し出されると同時に、現場までの最速のルートや、消火器と警報器の位置がマップで示されます。侵入事件が発生した場合には、ビデオ監視カメラで侵入者を追跡し、侵入者がたどったルートを「落としたパンくず」のように表示して、保安スタッフがその後を追えるようになるでしょう。

アプリケーションの可能性は無限です。

 

ARとビデオ監視 – すぐにも連携可能?

すでに多くの企業が、監視システムでARのメリットを活用しています。製造業、小売業、市街地監視など、ARテクノロジーによって既存のビデオストリームがさまざまな方法で強化され、さらに多くの使用事例が次々と出現しています。

この記事で詳しく説明したようなソリューションの開発の継続を阻む要因は、技術面ではほとんどありません。よりスマートで安全な世界の実現に向けて、このテクノロジーの可能性を制限するものがあるとすれば、それは私たちの想像力だけです。

Axisがビデオ監視の機能を拡張するARをいかに提供しているかについては、こちらをご覧ください。

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