エッジ分析 – 将来を見据えたビデオ監視への投資

Timo Sachse

ビデオ監視について、「エッジでの分析」という言葉を聞いたことがあると思います。簡単にいうと、近年強力になっているビデオ分析を、ネットワークの「エッジ」であるカメラ本体内部で行うことです。私の同僚であるAndres Vigrenが執筆した最近の記事が入門編として優れています。

大きな潜在力を秘めた新しいテクノロジーの例に漏れず、業界では、エッジ分析という言葉の使い方に熱気が感じられます。エッジベースの分析によるメリットを考えれば当然です。エッジベースの分析のメリットはサーバーベースの分析にはないものだからです。

ネットワークのエッジであるカメラ内部で分析を行うことで、価値あるデータに絞って、データを送信できるようになります。一方、サーバーで分析を行う場合、カメラで取得したデータをすべてデータセンターに送信して分析しなければなりません。データをすべて送信するため、必要な帯域幅は大きくなり、それだけコストが上昇します。エッジ分析では、撮影対象に近い場所であるカメラ内部で分析を行うので、最高品質の映像を分析できます。サーバーでの分析のように、カメラのデータを圧縮してデータセンターへ送信する必要がないからです。データ圧縮は、帯域幅の増大を軽減するために行われますが、同時に画像の品質低下を起こします。

ただし、新しい技術用語をめぐる熱狂的な態度には危険が伴います。流行語は過剰に使われたり、誤用されたりするので、理解が不十分になったり、不正確になったりするおそれがあります。これはエッジ分析にも当てはまります。不正確ではなくても、不十分な理解にとどまっているのはたしかです。

流行語は、あっという間に誇大宣伝のレッテルを貼られるおそれがあるのも危険なことです。人々は、誇大宣伝という印象のある物事に警戒の目を向けるため、価値ある新しいテクノロジーの普及に悪影響が及ぼしかねません。

誇大宣伝と非難されるリスクを承知で言いますが、私は、エッジ分析は画期的だと確信しています。その根拠は、現在話題になっている多くの使用事例だけではありません。エッジ分析を搭載した監視カメラに投資する理由が今のところ見当たらない企業でも、将来の有効な投資のために、早く一歩を踏み出すことが必要です。

 

エッジ分析に関する現状の認識と今後の可能性

ディープラーニングベースのエッジ分析の主眼は、きわめて正確な物体認識です。

こちらの記事(英語)で詳しく説明している交通管理を例に取ると、従来の分析に付きまとう問題の一つが誤認アラームの多さです。たとえば、水たまりや影を、高速道路に停車中の車両とカメラが誤認して、アラームが発生するような場合です。

高精度のエッジ分析は、この問題を大幅に減少させるだけではなく、物体の種類を見分けることも可能にします。交通管理の例に戻ると、トラック、バス、乗用車、オートバイを識別できるため、交通管理が非常に効率化され、今までにない可能性が開かれます。

このようなアプリケーションは有益ですが、エッジ分析の可能性の表層に過ぎません。現在の使用事例のほとんどは、いわゆる「シーン分析」と呼ばれるものが中心です。これは、特定の撮影場所をライブ監視し、そこで起こる出来事を分析し、アラート、あるいは、交通標識による警告や交通管制などの自動的にトリガーされるアクションで対応するというものです。

今後ビデオ監視映像自体と同様に、エッジ分析による映像処理が大きな可能性を切り拓く鍵となります。

 

ビデオ監視におけるデータの抽象化

最近はすべてに当てはまるようですが、これは結局のところ、データの問題です。

従来のビテオ監視のパラダイムは、映画やTV番組にたびたび登場するので、業界と無関係な人にもよく知られています。監視カメラで撮影したライブ映像や録画映像を、オペレーターが確認するという場面です。オペレーターは時々、特定のフレームで一時停止し、特定の部分がよく見えるようにズームインします。このように、視覚情報をオペレーターの目で確認しています。

もちろん、コンピューターに目はないため、エッジのカメラやサーバーでビデオ情報を確認、分析するにはデータに変換する必要があります。これがデータの抽象化であり、全体を何らかの簡素化された表現に還元することを意味します。自動車を例に取ると、エッジ分析を搭載した監視カメラは、人間と同じ方法で自動車を認識するわけではなく、自動車データの基本的な特性で認識します。

ビデオ情報のデータ変換は、シーン分析で主に使用される処理であり、エッジ分析では、ビデオ情報のデータ変換とメタデータの作成が行われます。

メタデータとは、基本的にデータに関するデータです。分かりにくいかもしれませんので、実例を見てみましょう。携帯電話を取り出し、撮影した写真を開いてみてください。画像には家、緑色の自動車、人物など、何らかの物体が含まれていることがわかります。

ただし、こうした画像にはメタデータも含まれています。携帯電話によって異なりますが、画像の右上にあるアイコンをクリックするとメタデータが見つかります。写真を撮影した日時、場所、カメラのシャッター速度など様々な情報を、メタデータは提供します。

データとメタデータの両方を利用することで、情報分析の効率が大幅に上がります。先ほどの例でいうと、私は携帯電話に何千枚も写真を保存しているので、特定の写真を探すのは並大抵の苦労ではありません。しかし、ギリシャで、午後に撮影した、青いボートが映っている写真、という条件で検索すれば、見つけたい休暇のスナップ写真を非常にスピーディに検索できるはずです。

 

未知なる未知を発見

エッジ分析によって作られるデータとメタデータの組み合わせは、時間とともに蓄積される膨大な情報を分析することや、各組織がそれぞれの関心分野で知見を得ることに役立ちます。こうした知見は、「自分たちがまだ知らないことさえ知らない事実」と呼べるかもしれません。

具体的な例を挙げると、「先月、バス以外の車両がバス車線をふさいだ回数」や「この地下鉄駅に平日午前7時から9時までに入場した平均人数」などがあります。これらは誰も答えを知りませんが、調査しなければいけない問題である、ということはたしかです。

エッジ分析の利点がこうした能力によって再び強調されるのは間違いありません。そのなかでもおそらく、「知らなかったことさえ知らなかった事実」に関する知見が分析によって明らかになるとき、つまり、「未知なる未知」から最も大きな価値が生まれるでしょう。

特に、ディープラーニングの利用によってますますインテリジェント化するマシンは、パターンの認識や、パターンに含まれる変則性の検知に非常に強力なパワーを発揮します。分析するデータの量が増えるほど、マシンによる予測や知見は正確なものになり、問題に対する迅速で正確な措置が可能になります。医学などの分野では、まさにその通りのことが起こっています。

ビデオ監視におけるエッジ分析の真の可能性は、ここにあります。時間の経過とともに大量のデータを分析するにつれ、パターンや変則性が識別され、安全性、セキュリティ、サービスの提供と効率性、プロセスの最適化など非常に多くの分野で、まだ予見されていない改善を実現できる可能性です。まさに、未知なる未知です。

 

早期導入者に開かれる機会

以上、部分的にSFのように聞こえる話だったかもしれません。エッジ分析は、まだ初期の段階です。とりあえず成り行きを静観していたい気もするでしょう。しかし、前述のように、エッジアナリティクスによるすべての、または、大部分の価値は、今すぐには実現されないかもしれませんが、時間の経過とともに着実に実現されます。

エッジ分析によって得られる潜在的なメリットは、現時点では「未知なる未知」です。確実に言えることですが、エッジ分析の利用を始めなければ、そのメリットが実現されることはありません。一歩を踏み出す時が来ています。

エッジにおける人工知能 (AI) と、ビデオ監視の可能性の詳細については、こちらをご覧ください。

 

エッジにおける人工知能