AIと手作業の融合による組立ラインの改善

デジタル化、オートメーション、そしてIndustry 4.0が製造業の広範な変化を促進しています。それでも、自動車業界などで行われている大量生産は、その大半がまだ手作業です。

製造業に関しては、極めて当然のことながら、話題の中心はIndustry 4.0です。ご存じの通り、インダストリアルIoT (IIoT) は、オートメーション、人工知能 (AI)、機械学習、拡張現実/仮想現実 (AR/VR) とともに、頻繁にバズワードとして取り上げられています。

これには相応の理由があります。すでに製造業においては、これらの強力なツールによって変革が進んでおり、この動きが鈍化する気配はまったくありません。私は、AxisでIndustry 4.0ソリューションの推進に携わる者の一人として、この分野を当然ながら重視しています。実際、多くの刺激的なイノベーションが起こっています。

ところが最近になって、自分の仕事や判断基準に捉われて、物事を固定概念で見ていることがどれほど多いか、気付かされる出来事がありました。大量生産における組立作業の72%が、依然として手作業で行われているという事実を知り、私は非常に驚きました。

この数字に遭遇したのは、Drishtiという新しいパートナー企業と話していたときのことでした。まだ頻繁に手作業が行われ、一般にリーン生産を規範としている様々な業界における生産性の向上、品質の改善、トレーニングに取り組む同社は、自動車業界で確固たる地位を築いていますが、医療機器やエレクトロニクスなど、他のロングテール型のディスクリート製造業でも成果を上げています。Drishtiは、Axisアプリケーション開発パートナー (ADP) プログラムの重要なメンバーでもあります。

手作業とAIの融合

Industry 4.0について語るとき、主な焦点となるのはスマートコンポーネント間の接続であり、マシンとの通信によってそのメリットを活用します。この観点から考えると、Drishtiが提供しているのは一種のハイブリッドソリューションです。同社は、ビデオを利用して、組立ラインで行われる手作業をAIに接続し、このプロセスで収集する大量のデータを分析して、今後の改善のための基盤とします。

これは大きな前進と言えます。なぜなら、ほとんどの大量生産ユニットでは、ストップウォッチで時間を測り、結果を書き留めるという従来通りの方法で生産性が測定されているからです。この方法は、オペレーションの改善に利用できる貴重なデータを見落としているという点で、非常に限定的なモデルです。

一方、Drishtiの手法では、各ワークステーションの上部にカメラを設置し、プロセスを迅速に、継続的に測定します。カメラに搭載されたアナリティクス機能とAIによって、ビデオストリームが、意思決定の基となるデータに変換されます。たとえば、各瞬間の所要時間に加えて、時間が長引いたり、品質や安全性にリスクが生じるような変則性、ボトルネック、反復的な動きの瞬間があったかについて、情報を得ることができます。

各ワークステーションで費やされた時間を測定し、プロセスで行われるべき動作がすべて実行されたかを判定することができます。省略されたステップがあると、アラームが発出されます。

より簡単に根本原因を発見

Drishtiの手法は、基本的にデータがすべてです。シンプルで、手に入れやすいデータであるため、不良品が出たり、顧客から苦情があったりした場合、より簡単に根本原因を突き止めることができます。たとえば、私が見たビデオでは、作業者が同じネジを2回、つまり、1回余計に締めていました。それほど重大な問題には思えないかもしれませんが、最終的に、このネジを固定するのに2倍のトルクが用いられるため、プロセスの後の段階や製品が使われる段階で不具合が起こる可能性があります。

すべてのステップが間違いなく行われていても、上述の問題のように、通常とは違う何かが起こった場合、アナリティクスソフトウェアはそれを生産エラーに分類するため、時を遡って不具合の原因をチェックすることができます。

結局、こうした取り組みはすべて、お客様にとってのビジネス価値につながります。Drishtiは、「生産に関する詳細な可視性」、「誤りの減少」、「従業員による付加価値の生成の支援」、「生産プロセス改善の迅速化」が、このソリューションの4つの価値であるとしています。いつものことながら、論より証拠です。たとえば、同社のある顧客企業では処理能力が21%向上し、別の顧客企業では生産ラインの人件費が34%削減され、さらに別の顧客企業では不具合率が48%も低下しています。

推奨役になるオペレーター

私は、この記事を通して皆さんにAxisの製品を売り込むつもりはありませんが、エッジ機能を搭載したAxisのカメラはDrishtiのアプリケーションのセンサーとして理想的であり、Drishtiにカメラを提供しているのはAxisだけという事実をお伝えしておきます。具体的なソリューションについては、今後の記事で紹介する予定です。その際、カスタマーエクスペリエンスの詳細や、アプリケーションとビジネスの本質についても詳しく説明します。

しかし、オペレーターの立場では、すべて問題なしというわけではない気がします。絶え間なく監視され、コントロールされているような感じがするでしょうか?

実際のところ、まったくそうではないことが明らかになっています。Drishtiが行った調査によると、逆に、オペレーターがこのモデルの推奨役になる場合が少なくありません。考えてみると、おそらくこの事実は意外ではありません。このモデルによって、客観性という要素がもたらされ、デジタル化とオートメーションが進む業界において、オペレーターの存在価値を証明する手段になるからです。収集したデータは、トレーニングや今後のスキル向上のための基盤となり、オペレーターと企業の双方にメリットをもたらします。

もちろん、Drishtiのサービスは、ビデオストリームにおけるEU一般データ保護規則 (GDPR) の遵守や、オペレーターのプライバシー保護にも配慮しています。お客様にとって、これは大きな懸案事項です。この点について、同社は、ご想像の通り、パートナーであるAxisの助けを借りて、設置するカメラにプライバシーマスクソフトウェアを導入しています。このソリューションは、ビデオ映像の品質や機能に影響を与えずに、リアルタイムで動作します。

大量のデータ

ご想像の通り、Drishtiのサービスでは、膨大な量のデータが収集されます。数十万時間にも及ぶビデオとデータをストリーミングし、分析し、保存する必要があります。今後の記事では、これほど膨大なデータを扱いやすくするAxisの圧縮テクノロジーについて紹介します。

これらのソリューションの動作について、また、Axisのソリューションが、手作業の組立生産における生産性と品質の向上に貢献するDrishtiのサービスにいかに役立っているかについて、詳しく紹介できるのを楽しみにしています。製造業におけるリーンプロセスに取り組んでおり、手作業での組立がオペレーションの重要部分だという方にとっては、特に興味深い記事になると思いますのでご注目ください。

Drishtiのウェブサイト