監視カメラは都市のデジタルツインにいかに付加価値をもたらすか

最近、仮想世界に多くの関心が集まっています。その背景には、おそらく今後、私たちの誰もが足を踏み入れたくなると思われる、潜在的な新しい「メタバース」への注目度の高さがあります。スマートシティの観点から見ると、都市環境で発生するプロセスや移動のモデルを作成すると、多くの利点がもたらされ、市当局が目的をより迅速に達成することに役立ちます。

これらのモデルは、歴史的にもリアルタイムでも、都市の動きやリズムを把握する手段になります。この情報を使用して、混雑率、応答時間、大気品質、交通流量など、さまざまな要因に関して知見を収集し、今後の計画や意思決定に利用することができます。

仮想モデルの作成というとSFのように聞こえるかもしれませんが、この活動は現在すでに進行中です。市当局は、さまざまなシナリオの影響を理解して予測できるように、さまざまな部門から収集したデータを「デジタルツイン」プラットフォームに統合し始めています。具体的には、予定されている道路工事が交通の流れに及ぼす影響の確認、事故発生時の最適な避難経路の特定、大気品質やエネルギー消費の改善を目的とする対策の影響分析などを行っています。ネットワーク監視カメラは、都市全域で映像データを取得し、事象をリアルタイムで記録することで、極めて重要なセンサーの役割を果たします。

 

デジタルツインとは ?

デジタルツインがどのように使われているかを議論する前に、デジタルツインとは何なのかを理解しておくと役に立ちます。デジタルツインとは、物理空間にある物体やプロセスを、デジタル形式でリアルタイムに再現した仮想表現です。スマートシティにおいては、IoTセンサーで収集したデータを使用して構築される、都市の仮想モデルです。使用されるデータは、大気汚染レベル、騒音レベル、気象条件、特定区域における車両・自転車・歩行者の動きなど、非常に多様となっています。

市当局が、さまざまな事象の動き、振る舞い、その後の影響を把握したい場合、デジタルツインプラットフォームが非常に役に立ちます。

たとえば、都市の中心部でコンサートが開催される場合、人々が利用する会場へのアクセス手段、最も混雑する傾向のある入口、歩行者の流れの方向について、データを収集します。市当局は、この情報を使用して学習成果を抽出し、同じ会場で行われる今後のイベントにおける群衆の動きを推測することができます。これにより、事故や事件の発生時における対応計画にも有益な情報がもたらされます。たとえば、最も混雑度が低い入口に関する情報を利用して、緊急対応ルートを事前に想定することができます。

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都市のダイナミックなリズムを把握

このような情報は、単発的なイベントに限定されるわけではありません。モニタリング機能を利用して、都市交通の一般的な動きを追跡し、マップ化することができます。その際、車両の台数と車種、一定期間における道路の利用状況などの情報が含まれます。

この情報は、都市インフラを変更する際の判断基準となり、今後の都市計画においては、計り知れないほど貴重です。たとえば、ある道路を歩行者専用にする場合、モデルを利用して道路交通と歩行者の流れへの影響をビジュアル化し、改良を行うことができます。

デジタルツインプラットフォームで複数の情報源からデータを収集する際、多次元AIなどの高度な分析を利用できます。さまざまなデータセットの分析にAIを適用することで、マクロレベルで応用可能な、より高度な知見が導き出されます。

これらの学習は、ある措置の影響と結果を確認できるため、「what-if」シナリオを実行するときに使用できます。このようにして、課題を事前に予測し、インテリジェントに計画を立案することができます。

 

貴重な情報を提供する監視カメラ

デジタルツインプラットフォームが力を発揮できるかどうかは、都市全域にわたって戦略的に配置したセンサーからの入力データの品質と詳細さによって決まります。このデータによって、モデルに情報が与えられ、正確な仮想表現を構築することができます。このプロセスにおいては、ネットワークカメラが極めて重要です。監視機能(映像分析のもととなる高品質な映像取得)だけでなく、後に続くアクションへのリアルタイムな視覚的フィードバックも、ネットワークカメラによって提供されるからです。

エッジのアプリケーションは、イメージセンサーで撮影されたビデオを解析し、(人数カウントなどの)群衆に関する情報や、特定エリアにおける車両の分類などに関する情報を提供することができます。そして、この情報をデジタルツインプラットフォームへ送り込むことができます。

都市の自然な動きの混乱を最小限に抑えつつ、措置を講じるにはどうすればよいかを判断する際に、これが非常に役立ちます。たとえば、補修工事のために道路を封鎖しなければならない場合、モデルを利用して、道路が最も空いているのはどの時間帯か、つまり、混雑を最小化するにはどの時間帯に工事を行うのが最適かをまず調べます。時間帯が明らかになったら、工事のスケジュールを設定し、スタッフを現場に派遣します。

カメラは、他にも付加価値をもたらします。道路工事による影響をリアルタイムで捉えることができるため、道路の封鎖が原因で混雑が大幅に悪化した場合には、係員を配置して交通整理に当たらせ、車両のルートを変更して混雑を緩和することができます。このような情報が役に立つのは、現場だけではありません。今後、同様なシナリオを計画する時に備えて情報を保存しておき、参考にすることができます。

 

スマートシティの目標達成を支援 – 現在そして未来

スマートシティで掲げられる目標は、応答時間の短縮、犯罪発生率の低下、駐車場の利用率の向上など、多種多様です。スマートシティで収集されるデータは、このような多様な目標に対応し、住民の住みやすさを追求するだけでなく、より広範な持続可能性の目標の達成にも貢献します。

デジタルツインプラットフォームは、市当局による情報の収集、具体的な措置の実行、進捗状況の計測、結果の予測に役立つ可能性があります。たとえば、大気品質の改善が目標である場合、どこで、何が原因で混雑が起こっているかをデジタルツインモデルで確認し、先回りする形で原因に対処できるよう、具体的な計画を立案することができます。開放車線を多くする、特定の時間帯に信号のタイミングを調節するなどの方法で、車両の流れを円滑にすることが考えられます。注意すべき点の一つが、プラットフォームのセキュリティです。改ざんされておらず信頼に足る知見を確実に得ることが重要です。

ネットワーク監視カメラは、動きをリアルタイムに監視できる視覚データと、今後の事象や変化に備える計画で必要な情報を提供するという、重要な役割を果たします。事象の検証は、テクノロジーに対するデジタルトラストの構築にも役立ち、テクノロジーの普及を促進します。このタイプの仮想モデルは、スマートシティを目標に向かって前進させ、住民にも来訪者にも恩恵となる、極めて重要な要因になります。

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