スマートシティにおける騒音問題への対処

Andreas Göransson

騒音公害は、現代人の健康を脅かす2番目に大きな害となる環境的脅威です。こう言うと多くの人が驚くことでしょう。確かに、絶え間ない自動車の走行音や、明け方にクラブから漏れてくる音楽などは不快ですが、2番目に危険とは一体どういうことでしょうか。残念ながら、これは非常にあり得ることです。世界保健機関 (WHO) の推定によれば、2018年の時点でも、騒音公害が原因で西ヨーロッパだけで160万年に相当する健康寿命が失われています。3年経った今では、世界中のあらゆる騒音源を考慮に入れると、状況はさらに悪化していると見て間違いありません。

しかし、どのような理由で騒音がこれほどまでの脅威となり、単に人をいらいらさせるだけでなく、健康にまで悪影響が引き起こされるのでしょうか?誰もが知っている問題はストレスの増加との関係ですが、騒音公害という現象には、単なる不安では済まされない、はるかに大きな問題が潜んでいます。騒音公害に結び付く身体的影響としては、呼吸器の興奮、高血圧、胃炎、さらには心臓発作さえあります。しかも、これが全部というわけではありません。頭上を飛び去る飛行機、日常的な交通音、近所の建設工事など、ごくありふれたものが原因で引き起こされるおそれがあるのです。

そもそもこの現象は、人類初期の時代まで遡る進化に結び付いています。人間の脳幹は、些細な異常音を耳にしただけでも瞬時に闘争、逃走反応を引き起こすように発達してきました。今もそれと同じ反応が、削岩機、トラック、クレーンなどによって無意識に引き起こされているおそれがあります。報道によると、この脅威は今なお悪化しています。最新の報告によると、バンクーバーなど一部の都市で、市民からの苦情は2020年中に2倍に増加しています。

過去2、3年に都市を離れてどこか静かな場所に行ったとき、突如として静寂の淵に立たされたような異様な感覚を覚えた経験があれば、騒音公害に過剰にさらされていることが原因かもしれません。

 

騒音問題への対応の現状

最近、オランダのハイテク企業SoramaのCEO、Rick Scholteと情報交換する機会がありました。Axisのパートナーであるこの企業は、騒音公害に関するエキスパートです。Rickによると、恐ろしいほど蔓延している騒音公害という問題に対処するために、何らかの対策を試みているスマートシティの多くは、レベルの低いテクノロジーを使用して対処しようとしています。具体的には、「賢くないデシベル計」と彼が呼ぶものです。これらのデバイスは非常に能力が限られ、近辺の何かが原因で一定のデシベル閾値を超えたことを認識できても、その音源をピンポイントで特定したり、個々の音の原因が何なのかを把握したりすることはまったくできません。

Rickは別の問題も教えてくれました。都市によっては、騒音公害について十分な認識を持っておらず、解決すべき問題があるということを理解するだけのモチベーションに欠けている場合があります。Rickは、次のように言います。「ある都市の騒音調査を担当した人を知っています。都市のいたるところに大量のデシベル計を設置し、ある特定の交差点が他と比べて非常にうるさいことを突き止めました。顕著に高い測定値が出たのです。しかし、残念ながら、問題の源を特定することができませんでした。問題に対処するための予算もなかったので、計器を約150 m動かし、より低い測定値が出るようにすることで問題を回避することにしたのです。一般に地方自治体の職員は、限られたリソースで騒音公害とどうやって戦うか頭を悩ませています。リソースも知識も乏しく、上司からの支援も受けられないからです。」

「このように不正確で、場合によっては完全に誤解を招く情報が5年ごとに騒音マップとして編纂されます。これらのマップは変動することがなく、建設工事のために買い取られでもしたら、あっという間に時代遅れの代物になってしまいます。騒音公害に対処する現在のアプローチは、控えめに言っても最適とはいえません。」

 

騒音をどのように分析すべきか?

鍵を握るのはSoramaが開発しているような音響センサーとモニターです。音響センサーは、膨大な数の小型で高品質なマイクロフォンを利用して、音がどこから聞こえてくるのか、その音はどれくらいの大きさか、どの時点で音量が下がるのか等々について、正確にビジュアル化することができます。このテクノロジーを利用すれば、建設工事でも、近所迷惑な騒ぎでも、スマートシティにおける個々の騒音源をピンポイントで特定できます。

より具体的な例として、あるスマートシティで特定の交差点が毎日17時から17時30分までの時間帯に、近隣の住民にとって顕著な騒音問題を引き起こしていると仮定します。市当局が音響センサーを使って調査したところ、一定の方向から来る車両の音が原因であり、職場からの帰宅時ラッシュに対応できるキャパシティがこの交差点にはないことが判明しました。短期的な解決策は、単純にこの情報を利用して信号灯の制御を変え、停車と加速を絶え間なく繰り返す車両の多さによって最も大きな騒音源になっている車線を優先させることで交通の流れを最適化し、騒音負荷を最小限にするというものです。長期的な解決策としては、交差点の全面的な再設計が考えられます。

さらに、スマートシティでは、24時間年中無休で稼働を続ける音響センサーの情報を基に、市民との透明性の高いコミュニケーションを展開できます。一部の都市が大気環境 (これも、バンクーバーの事例) に関するデータを公表しているのと同様に、騒音レベルをリアルタイムで公表できます。その結果、問題に対処するための都市のイニシアティブに関する説明責任が強化されます。市民は既知の騒音問題について進行状況をチェックしたり、都市のどの地域に住めばよいか調べたりすることができます。

 

ビデオ監視と騒音アナリティクスの統合によって生じる付加価値

意思決定の基となるデータを収集することができるSoramaの高品質な音響センサーとAIの組み合わせは、スマートシティにおける騒音公害の危険を減らすための協調的な取り組みに欠かせません。ネットワークに接続する監視カメラと音響センサーの組み合わせは、非常に多くの付加価値をもたらします。視覚と聴覚の2つが一体化することで、状況について、情報豊富で正確なビューが作成されます。

たとえば音響センサーのデータを利用して、PTZ (パン、チルト、ズーム) ビデオカメラを、特定の騒音源に自動的に正確に向けることで、問題を視覚的に検証するとともに、状況がエスカレートした場合には、非常にスピーディに対処することができます。怒鳴り声や自動車のクラクションなど、騒音が突然大きくなった場合には、事件の早期警告と見なし、悪循環に陥る前に対処できます。ガラスが割れる音であれば、強盗や破壊行為のおそれがあるとして、カメラにアラートを送信することができます。

一時的な事象だけでなく、ビデオ監視カメラで長期にわたって取得した視覚的データから、騒音公害の具体的な原因について、さらに詳しい知見が得られる場合があります。騒音の大きい交差点の例に戻ると、早朝の騒音は建設車両と配送車両が原因であるのに対して、夕方は通勤車両が原因であると判明したと仮定します。さまざまな騒音源を視覚的に詳しく識別することができれば、より正確でインパクトのある軽減対策を立案できます。たとえば、ラストマイル配送のための音の静かな電気自動車の採用を計画よりも前倒しで実施したり、建設車両の大きさを制限したりといった市当局の判断が可能になります。

このようなメリットを実現するために、既存の監視インフラをアップグレードしたり、交換する必要はありません。オープンテクノロジーに基づく監視カメラネットワークを利用すると、音響センサーを使って簡単にアップグレードできる、ほぼ無限に拡張可能なソリューションが成立します。市当局は、騒音公害レベルの分析と戦略の策定をただちに開始することができます。

人間にとって健康的でスマートな、持続可能な未来を確保したいのであれば、騒音公害の危険性とその防止策について、そろそろ明確に知る必要があります。

スマートシティにおける環境モニタリングに役立つAxisテクノロジーの詳細については、こちらをご覧ください。

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