エッジ分析機能の転機

記事
2022年05月6日
監視カメラで分析を行うことは新しいことではありませんが、開発者の敷居を低くし、優れた処理能力を持つ堅牢なカメラとディープラーニングの組み合わせにより、開発者の想像力以外に制限するもののない、次世代の分析をエッジで行うことが可能になります。アクシスコミュニケーションズのコアテクノロジー担当ディレクター、マッツ・チューリン (Mats Thulin) に、現在と将来のメリットについて彼の見解を聞きました。

Axisシステムオンチップ (SoC) の最新世代であるARTPEC-8の登場は、ネットワークのエッジにおけるディープラーニング分析の新時代を象徴しています。ARTPEC-8は、20年以上にわたる開発の積み重ねにより、カメラ自体の内部で処理されるリアルタイムでの物体検知や分類などの分析機能を提供します。

カメラ内蔵分析機能は新しいものではなく、ビデオ動体検知がAxisカメラに搭載されたのは10年以上も前のことですが、優れた画質とディープラーニングの組み合わせは、分析機能に変革をもたらします。

サーバーでの解析負担を軽減

「10年前、監視カメラにはネットワークのエッジで高度な分析を実行するために必要な処理能力がなかったため、サーバーベースの分析機能に自然と関心が集まりました。」とアクシスコミュニケーションズのコアテクノロジー担当ディレクター、マッツ・チューリン (Mats Thulin) は述べています。「しかし、サーバーの処理能力は十分であっても、他の要素によって課題が生じます。カメラからサーバーに転送する前にビデオ映像を圧縮すると、分析する画像の品質が低下します。また、すべての分析をサーバーで実行するソリューションの拡張には、高いコストがかかります。」

これは特に、ディープラーニングを分析に使用される場合に当てはまります。マッツは続けて次のように語っています。「ディープラーニングを用いた分析は、計算負荷の高いタスクです。サーバー上でのみ実行する場合、映像をエンコードしてからデコードする必要があり、ストリームを処理するまでにさらに時間がかかります。高解像度でフレームレートが20フレーム/秒または30フレーム/秒のカメラ、20~30台を使用した比較的小規模なシステムでも、多数のビデオストリームを処理するには、かなりのリソースが必要です。」 

「エッジデバイスの処理能力と性能は、分析機能をエッジデバイスに移行できるレベルに達しています。」とマッツは付け加えます。「また、カメラ内蔵の分析機能を高めることで、計算負荷の高いサーバーベースやクラウドベースでの分析の必要性を減らすことができます。加えて重要なのは、これにより、撮影した時点で画像に分析機能を適用できる、つまり最高水準の画質で分析を行えるようになります。」

機械向けに最適化された画像と人間向けに最適化された画像

画質の向上には、人間の代わりに機械が画像を「見る」ことが多くなっているという事実が考慮されます。機械は人間と同じように画像を見るわけではないため、これは重要な違いです。

「ビデオ映像を人間の目に合わせて最適化するだけでなく、AIによる解析向けにチューニングできるようになりました。」とマッツは説明します。「例えば、人間のために画像をチューニングする場合、一般的にはノイズを減らすことを目標とします。しかし、AIによる分析では、ノイズの低減はそれほど必要ではありません。人間向けの画像調整とAI分析向けの画像チューニングでは目的が異なるため、両方を同時に使用することで、より高品質の結果が得られます。」

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システムの拡張性の向上

エッジで分析を行うことで、ネットワーク経由で送信されるデータ量が削減され、ネットワーク帯域幅、ストレージ、サーバーの効率を高めることができます。サーバーベースの分析機能に、もう果たすべき役割がないということではありません。それとはまったく異なります。最終的には、エッジ分析機能と、サーバーベースやクラウドベースの分析機能の長所を利用したハイブリッドアプローチが最適なソリューションになります。

「エッジとサーバーで処理負荷を共有することで、システムの拡張性が高まります。エッジ解析機能を持つ新しいカメラを追加すれば、サーバーの処理能力を上げる必要はありません。」とマッツは説明します。

スタンドアロンのエッジシステムは、物体の認識と分類に基づいてリアルタイムのアラートを作成するシーン分析アプリケーションに引き続き使用されますが、マッツは、サーバー分析とエッジ分析のハイブリッドソリューションが、高度な処理要件に対してますます優位になると考えています。

これは、ビデオ映像と、エッジ分析機能によって作成されるメタデータによって可能になります。映像におけるメタデータは基本的に、シーン内の要素にタグを付けます。つまり、単なるシーンの生ビデオ映像ではなく、シーンに関する記述子やインテリジェンスが追加されます。 ビデオ管理ソフトウェア (VMS) は、このメタデータを使用して、リアルタイムまたは事象発生後のアクションのトリガー、関心の高い要素の検索、さらなる分析などを行うことができます。

プライバシーの保護

エッジ分析機能は、プライバシーをサポートすると同時に、セキュリティ、安全性、運用上のメリットをもたらします。例えば、小売店舗で有効なエッジベースの人数計測の場合、カメラからビデオ映像ではなく、データのみを転送するだけで実行できます。

ただし、エッジ分析機能は、ビデオ映像が転送される場合でもプライバシーを保護することができます。

エッジ分析機能は、プライバシーをサポートすると同時に、セキュリティ、安全性、運用上のメリットをもたらします。例えば、小売店舗で有効なエッジベースの人数計測の場合、カメラからビデオ映像ではなく、データのみを転送するだけで実行できます。

コンピュータービジョンアプリケーションの新たな世界

ARTPEC-8を搭載したハードウェアの性能向上に加えて、Axis Camera Application Platform (ACAP) の強化により、これまで以上に幅広い開発者が、使い慣れた環境でコンピュータービジョンアプリケーションを開発する機会を得られるようになりました。現在、第4世代となるACAPには、業界標準のAPIやフレームワーク、高度なプログラミング言語のサポートが含まれています。

「ACAPバージョン4の変更により、従来の監視分野とは異なるバックグラウンドを持つ開発パートナーが増えています。」とマッツは言います。「ACAPは、クラウドやサーバー環境の経験を持つ開発者向けの、オープンで使いやすいコンポーネントをベースにしています。当社では、開発者がさまざまなONVIF準拠製品を使用してハイブリッドアーキテクチャを作成できるオープンな環境を提供するため、ONVIFメタデータの仕様を推進しています。これは、ハイブリッドのシステムとアーキテクチャを実現する上で重要な要素の一つです。」

また、分析機能の検知能力の向上は、セキュリティ開発者や幅広い分野のイノベーターにも役立っています。

「物体検知が進歩し、道路、芝生、駐車場の区別など、カメラによるシーンの解釈がますます向上することで、シーンやシーン内の物体に対するより正確な分析を行えるようになります。この知識は、新たなレベルの革新をもたらすでしょう。」とマッツは語っています。「エッジ解析の新たな可能性は、既存のAxisパートナー、コンピュータービジョンアプリケーションに初めて取り組む開発者、そしてお客様にとって、非常に大きなものです。」

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