小売店舗におけるシュリンケージの削減を目的としたビデオアナリティクスの利用トレンド

物理的な損失の防止を目的とするテクノロジーの中で、最も広く普及しているのがビデオ監視です。まず、基本として、監視システムをできるだけ効果的なものにすることが重要です。売場や出口などリスクの高い場所を中心に、店舗全体をカバーすることが鍵になります。こうした基本事項をクリアしたうえで、適切な高解像度カメラを使用し、ビデオアナリティクス技術を導入すると、万引きや内部犯行等によって商品が盗まれて在庫数が減少する「シュリンケージ」を低減させるための、非常に貴重なツールになります。

どの業界においても、シュリンケージに見られる共通項は人間の行動であるため、シュリンケージを減らすには、人的要因を理解した上で、要因に対処し、可能な限り行動を変えさせるソリューションを設計することが重要です。ビデオアナリティクスを基盤とするソリューションの中には、その登場の時期に焦点となっていた人数計測などのビジネスインテリジェンス分析から進化し、効果的な損失防止ツールになっているものがあります。

方向検知

人数計測は小売業界ですでに定着していますが、一般に、食品小売業においては、まだ標準のソリューションになっていません。食品小売店の場合、買う気がないのに入店する顧客はほとんどおらず、顧客転換率はほぼ100%だからです。食品小売企業の多くが、レシートの枚数を来店客数の目安にしていますが、実際には、入口から出ていこうとする顧客に問題があることが分かっています。これは、不審な行動を物語る指標であり、潜在的に万引きが発生しているおそれがあります。この問題に積極的に対処する手段の1つが、方向検知テクノロジーです。方向検知機能を備えたアナリティクスは、来店者数を追跡するだけでなく、入口から外へ出ようとするなど、好ましくない方向に立ち去ろうとする人物を検知した時点でアラームをトリガーします。ライトの点滅や音声による通知を組み合わせると、不正行為の疑いのある事案の発生をスタッフや警備員に知らせることができます。

この場合、何をすべきかについて、従業員をトレーニングしておくことも欠かせません。たとえば、任意の手荷物検査など、従業員が適切なプロセスを実行できるようにします。実例からのフィードバックによると、適切なプロセスに従った場合、この種のソリューションは、月単位ではなく、週単位で投資を回収することができています。

無作為選択

コンピューターハードウェア、ソフトウェア製品や小型携帯端末の販売店など、高額商品を扱う専門店では、在庫品の損失が莫大な額に上るケースがよく見られます。魅力ある小売商品を扱う大規模な流通センターでも、同じことが言えます。原因のひとつは、内部の人間による窃盗です。従業員による窃盗は小売業におけるシュリンケージの主要な原因でありながら、損失防止の観点からは、顧客による窃盗ほどには注意が向けられていないのが実情です。

従業員による窃盗を減らす目的で採用できる最も優れた戦略のひとつが、スタッフの抜き打ち検査ですが、この戦略は慎重に行わないと、スタッフの士気を低下させるリスクがあります。特別に機能拡張された人数計測アナリティクスを利用すれば、特定のスタッフを不当に狙っていると訴えられることもなく、抜き打ち検査を効率よく、システマティックに行うことができます。このようなアナリティクスシステムは、カスタマイズが可能です。選択の割合を調整することができ、検査を行うタイミングでセキュリティ担当者に通知を送信する方法も設定できます。無作為選択テクノロジーは、出口にもセルフレジにもうまく適応します。

短期間での投資回収 (ROI)

前述のように、小売店では、ビデオ監視がすでに非常に広く浸透しています。ハードウェアへの投資が行われているので、その投資を最大限に活かし、ビデオアナリティクスを賢く利用するのが合理的です。必要な費用は比較的安く、シュリンケージの削減による潜在的利益が大きい場合はなおさらです。ビデオアナリティクスソリューションは手頃なコストで導入できるため、小売企業は、非常に短期間で投資を回収できる可能性があります。

 

損失防止のためのAxisの取り組み