エッジストレージの神話の検証

SDカードはどれでも同じというわけではありません。エッジストレージが進歩した結果、ビデオ監視用に最適化されたSDカードは、機能性や耐久性に乏しい従来のSDカードとはまったく違うものになっています。

それにも関わらず、SDカードに関する誤った認識が市場に横行しています。「どんなSDカードを使っても変わりはない」という固定観念は、企業において、機会の損失につながるおそれがあります。たとえば、この認識が原因で、不適切なSDカードをデバイス用に選択しかねず、その結果、おそらく短期間で消耗する、耐久性に欠けるエッジストレージになってしまいます。さらに、高品質なエッジストレージが重要な役割を果たす最新の使用事例について知らなければ、耐久性の高いSDカードで得られるパフォーマンス上、さらには経済上のメリットを往々にして見逃すことになります。

 

一般の認識とは異なるSDカード

SDカードはどれも大差ないという旧来の認識は、事実無根です。監視ソリューションが進歩し、これまで以上に強力で「完全な」ソリューションがネットワークのエッジで実現された結果、エッジストレージにも新世代のソリューションが要求されるようになりました。高い耐久性に始まり、暗号化機能の搭載、正常性モニタリング機能にいたるまで、ビデオ監視用に最適化された新世代のSDカードが存在します。

従来のカメラ/サーバーモデルが年月とともに進化するにつれ、企業の監視システムにおいて、エッジストレージが果たす役割の重要性が高くなっています。適切なSDカードを使用することで、より多くの機能を活用し、監視ソリューションからより多くのメリットを引き出すことができます。

それにも関わらず、SDカードはどれも大同小異という誤った認識により、監視システムから最大のメリットを得られるかが危うくなっています。今日のデバイスは複雑化しているため、エッジで使用するストレージは、本質的に高レベルなものが要求されます。ここでは、エッジストレージに関して広く信じられている誤解を正し、このテクノロジーの現在の機能について、事実関係を明確にします。

 

神話1: エッジストレージは、冗長性を確保するのに役立つだけである

これは、もはや事実ではありません。ネットワークやサーバーの障害の発生時に備えてシステムの信頼性を高めるために、連続録画によるバックアップとしてエッジストレージを利用できるのは事実ですが、このソリューションは、有効な一次ストレージメカニズムとしても使用できるレベルにまで進化しています。

実際には、SDカードは、ビデオデータのバックアップをはるかに超えた用途に対応します。多くの企業が、エッジストレージソリューションを一次ストレージのオプションとして、メタデータを含む豊富な一連のデータを得る目的で使用しています。一例として、学校の周辺区域を監視する、より「完全」なエッジソリューションの一部分として、レーダーデバイスをビジュアルカメラに接続する場合を考えてみましょう。この場合、レーダーにはSDカードが必要です。通行する車両の台数や、車両の速度と移動方向について統計情報を収集するためです。この事例では、SDカードが必要不可欠な一次ストレージの役割を果たします。

エッジソリューションが大量のデータを得る、複雑化した、「完全」なものに進化したように、エッジストレージソリューションも、エッジソリューションの運用や機能性をサポートするよう、本質的に進歩しています。

 

神話2: SDカードの耐用期間は、ネットワークビデオレコーダー (NVR) やレコーダーシステムほど長くない

低水準のSDカードであればNVRより耐用期間が短いのは事実ですが、市場に流通しているビデオ監視用に最適化されたSDカードは、高度な耐久性を備えています。

監視システムのカメラは、平均8~10年で交換する必要がありますが、カメラよりも耐久性の高いSDカードは、耐用期間が10年以上になる場合があります。このような高性能なSDカードの設計と仕様は、メーカーとサプライヤーとの緊密な共同作業によって実現されており、優れた耐消耗性とともに、可能な限り最高の耐久性を実現します。実際、必要な保存期間を考慮した上で適切な容量のカードを選択すれば、カメラよりもカードのほうが長持ちする可能性が高いでしょう。

 

神話3: エッジストレージは、高画質のビデオ監視に対応できる能力を備えていない

一部の認識とは逆に、高性能なSDカードを一次ストレージとして、あるいは、接続が失われた際のフェイルオーバー録画のための冗長性を目的として、高解像度ビデオをローカルかつ有効に録画することができます。帯域幅が限られたアプリケーションの場合、ライブビデオは低解像度で表示されても、SDカードには高解像度ビデオがローカルに録画されています。

カードの保存期間は、カメラの構成によって左右されます。動体検知、アラームイベント、時間帯により、異なるフレームレートと解像度で録画が行われます。たとえば、容量128 GBの耐久性の高いSDカードの保存期間は、カメラの構成と必要な解像度に応じて、20日から215日の範囲で変動する場合があります。小容量の64 GB SDカードの保存期間は、10日から100日以上になります。

 

神話4: エッジストレージの使用は、サーバーレス環境に限定される

列車やバスなどの車載用にも使われる自己完結的な監視ソリューションなど、ネットワーク接続のない場所ではエッジストレージが非常に便利であるということから、SDカードはこのような用途でしか使われないという認識が広まっています。しかし、これはまったく事実ではありません。

ネットワーク帯域幅が限られている場所や、ネットワーク接続そのものがない場所でSDカードが手頃なエッジ録画ソリューションになるのは確かですが、それ以外にも非常に多くのメリットがあります。エッジストレージをビデオ管理ソフトウェア (VMS) と統合すると、空港や大量輸送ハブなどのミッションクリティカルな施設に適した、より堅牢で、柔軟なビデオ監視システムを構築することができます。このような施設では、出入口を撮影するカメラのエッジストレージが、戦略的バックアッププランの極めて重要な部分になる可能性があります。

重要なポイントとして、エッジストレージは、ビデオと、レーダーデバイスで取得する統計情報などのメタデータをエッジで録画、入手する目的でも利用できます。その後、このデータをサーバーで解析し、学校周辺の道路の監視による交通の傾向など、トレンドを探り出すことができます。

 

神話5: SDはハイジーンファクターであり、戦略的な購入品目ではない

多くのカメラにSDカードが付属しているため、SDカードは、なければ不満足につながるハイジーンファクターであり、戦略的に購入する品目ではないという概念が長く続いています。十年前はそうだったかもしれませんが、今では、エッジストレージには、ビジネス価値を高めるさまざまな利点があります。

たとえば、多くの企業が強力なエッジソリューションに投資しているため、投資から最大のメリットを引き出すには、エッジストレージが必要な条件を満たしていることが極めて重要です。複雑なエッジソリューションで低水準のSDカードを使用すると、初期費用を節約できたとしても、長期的に最適なパフォーマンスが得られず、不経済ということになりかねません。

同様に、監視システムをサポートする目的で購入し、運用し、保守を行う必要があるサーバーの台数が減ることで、エネルギーとコスト面でどれほどの節約効果が期待できるかを考えてみましょう。サーバーとエッジストレージオプションを組み合わせて使用するハイブリッドクラウドシステムへの転換によって、要件に合わせたシステムの調整が可能になるだけでなく、エッジストレージソリューションを取り入れることで、サーバー関連コストを削減することができます。耐久性の高いSDカードは、耐久性の低いSDカードと比較して初期費用が高額かもしれませんが、ハイブリッドシステムにおいて、このような監視用のSDカードを戦略的に導入することにより、システムの総所有コスト (TCO) を最小化し、最終的に優れた経済性を確保することができます。

 

主な考慮事項

耐久性の高いエッジストレージソリューションは、あらゆる分野で広範囲に及ぶメリットをもたらしますが、いくつか考慮すべき重要な要因があります。

状況によっては、事件、事故の調査や法的な必要条件のため、高フレームレートのビデオを長期間にわたって保存しなければならない場合があります。この理由から、エッジストレージに関する制約が生じます。結果的に、サーバーベースのストレージへの定期的なデータ転送やオフロードについて熟考し、取り決めを行う必要があります。

また、希なケースですが、映像から自分の身元が割れてしまうことを危惧した犯罪者や破壊行為によってカメラが攻撃を受けたり、物理的に危殆化するおそれがあります。エッジストレージの場合、カメラが紛失するとデータも紛失しますが、暗号化に対応した監視デバイスとSDカードを選択すれば、SDカードが盗まれても、第三者がデータに不正にアクセスする事態を心配する必要はありません。窃盗によるデータの完全な紛失を避けるには、やはり、ビデオデータの転送やオフロードに関する取り決めが必要です。

 

ニーズに最適な選択を

エッジストレージに関する認識を改めるべき時が来ました。SDカードはどれも同じというわけではありません。最大のメリットを引き出すには、ストレージ容量や保存期間に関するニーズに最も適した選択肢を選ぶ必要があります。

効率化を図り、コストを節約するには、どの部分にエッジストレージソリューションを導入し、どの部分はレコーダーやサーバーなどに頼るのが合理的かを考えてください。最適な組み合わせを行うと、NVRやサーバーのコストとメンテナンスの負担が軽減され、ビジネス価値が向上しますが、最適な組み合わせはお客様ごとに、用途ごとに異なります。

AXIS Surveillance Cardと、このカードがビデオ監視用にいかに最適化されているかの詳細については、こちらをご覧ください。

AXIS Surveillance Card(英語)