エッジで完結するソリューションを構築する

ビデオ監視ソリューションは、かつてはサーバーベースが圧倒的多数を占めていましたが、このパラダイムが近年崩れてきています。監視カメラ自体の処理能力が向上したことが、その主な原因です。監視カメラは実質的に、高品質なレンズを主要センサーとする強力なネットワークコンピューティングデバイスになっています。

その基盤が、Axisのシステムオンチップ (SoC) であるARTPECです。すでに第8世代となったARTPECは、長年の開発プロセスにより、ビデオ監視の要件に合わせて最適化されています。今では、こうした要件にディープラーニング機能やサイバーセキュリティも含まれるようになりました。

このような進化により、ネットワークのエッジで、すなわち、データをキャプチャしたポイントで分析し、保存する完全なビデオ監視ソリューションを構築できる可能性が生じています。エッジソリューションがもたらす利点について考えてみましょう。

 

利点:つまりは、効率性と有効性

エッジソリューションの主な利点は、2つのカテゴリーに分けられます。ビデオ監視ソリューションの導入と運用の実務に係るもので、もう一つは、ソリューション自体の機能に関連する利点です。この2つによって、効率性と有効性が向上します。

 

実用的な効果に着目

エッジソリューションの中心は、言うまでもなくカメラです。最新の監視カメラは、きわめて強力なネットワークコンピューティングデバイスであるにも関わらず、Power over Ethernet (PoE) 接続を行うだけで運用することができるため、導入やインフラの設備にかかる労力だけでなく、それらに関連するコストも大幅に削減することができます。

エッジソリューションは、単独ではサーバーを必要としません。前述のように、これは、独自の処理能力と、専用に設計された耐久性の高いSDカードで実現される大容量のエッジストレージ機能によるものです。明らかな利点として、インフラ、運用、メンテナンスに必要なコストを低減することができます。

このようなシンプルさと「自己完結性」のおかげで、以前は設備面から導入が困難だった場所にも高度なエッジソリューションを導入できるようになりました。これには、たとえば、遠隔地の再生可能エネルギープラントなど、インフラが整っていない場所や、スペース面積と温度調節の観点からサーバーを設置できなかった場所も含まれます。

最終的に、多くのエッジソリューションは、エッジ、クラウド、オンプレミスサーバー環境の利点を採用したハイブリッドソリューションの一部を構成することになります。その場合にも、カメラ本体の内部での処理、分析、保存が行われるため、カメラからネットワーク経由で転送しなければならないデータ量が大幅に減少し、帯域幅やサーバーストレージの需要を削減することができます。

 

セキュリティと安全性における利点

実用上の利点は確かに魅力的ですが、監視ソリューションの価値は、あらゆる産業分野や環境におけるセキュリティと安全性の向上を目的とした具体的な用途への対応能力の高さによって決まります。

セキュリティ部門がより積極的な行動を行う上で、エッジソリューションは中心的な役割を果たします。データソースに近い場所、すなわち、カメラに内蔵され、ますますインテリジェント化する分析と、ディープラーニング、高度な物体認識、追跡機能の採用により、エッジソリューションで正確なアラートやアクションを自動的に起動することができます。

その結果、セキュリティ業務の有効性と効率性が本質的に向上します。セキュリティ担当者は本当の緊急事態にのみ注意を向ければよいため、少人数のセキュリティ部門で多くの成果を上げられるようになります。

エッジソリューションはあらゆる業種で採用することができますが、魅力的な使用事例をいくつかご紹介しましょう。

 

石油、ガス業界におけるセキュリティと安全性

石油、ガス業界はエッジソリューションが理想的な業種です。遠隔地にある場所であっても、プラントのセキュリティと現場で働くスタッフの安全と健康をサポートする目的でビデオ監視を採用する必要があることは明白です。

エッジソリューションは、セキュリティの観点では、侵入行為に対する最初の防御を自動化することができます。制限区域に入ろうとする人や、周辺をうろつく人を検知した場合(人間と動物などを区別して認識することができる)、ソリューションが自動的にホーンスピーカーから音声警告を流し、見られたことを知らせ、その区域から離れるように促すことができます。同時に、接続されたアプリケーションを通じてセキュリティチームはアラートを受信し、ライブのビデオストリームを確認した上で適切な措置を行うことができます。

安全衛生に関連する問題についても、たとえば、適切な個人保護具 (PPE) を着用していない作業員をカメラが検知した場合や、ビデオアナリティクスによって転倒事故が検知された場合に、同様のアクションを起こすことができます。

さらに、分析とエッジソリューションに統合された追加センサー(煙検知、重要な機械の温度や振動を監視するセンサーなど)により、セキュリティやメンテナンス担当者に自動的に警告を発し、致命的な故障の前に改善策を講じることができるようになります。

 

小売業向けの効果的で効率的なソリューション

複数のチェーン店を運営する小売企業の場合、ITインフラに大規模な投資を必要とせず、エッジソリューションによって、高度なビデオソリューションの機能が得られます。ソリューションに含まれる分析機能により、顧客体験とセキュリティの両面でメリットが得られ、監視カメラで状況を検知してから店頭で措置を実行するまでの反応時間を短縮することができます。

店内での顧客の動きを分析しモニターすることで、顧客が足を止めることが多い場所を特定し、店内の音声システムを通じて販促メッセージや適切なBGMを自動的に再生することができます。レジ前の行列数の分析機能により、スタッフにアラートを送信してレジの数を増やし、販売機会の損失や顧客の不満足を未然に回避することができます。

損失防止の観点では、高価な商品のそばでうろうろしている人や、間違った方法で入店した人など、盗難の可能性を示す不審な行動をカメラで警備員に知らせることができます。

 

駐車場における自動化

エッジソリューションは現在、ビデオデータと関連するメタデータ(ビデオデータに関するデータ)の両方を取り込み、解釈しています。

エッジソリューションは、非常に効果的な自動駐車監視員として機能することができます。ナンバープレート識別機能によって、承認済みの従業員・訪問者リストに照らし合わせて到着車両をチェックして、自動的にゲートを開けたり、携帯電話に送信した一時的なQRコードなど追加の認証情報の提示を求めたりすることができます。

セキュリティをさらに強化するため、追加のメタデータを利用して、車両の識別や検証を行うことができます。たとえば、白いライトバンが特定のナンバープレートを付けているにも関わらず、車両の色や車種が異なる場合には、アラートがトリガーされ、セキュリティスタッフが訪問者を確認することができます。

このようなソリューションの場合、PoEが1つあれば動作するため、設置の自由度は非常に高くなります。

 

プライバシーにも配慮

カメラ本体に完全に内蔵されたエッジソリューションは、プライバシーや個人データの保護という点でも重要なメリットをもたらします。

AXIS Live Privacy Shieldなどのアプリケーションでは、映像に含まれる人物、車両、動物などの移動物体のマスキングを行えるため、撮影した瞬間からプライバシーが守られます。この機能は、特に学校、医療機関、更生施設などの環境で有益なだけでなく、規制によって義務付けられるケースも増えています。

 

運用手順のべストプラクティスを考慮する必要性

どんな業種にも利点をもたらすエッジソリューションですが、ある種の用途においては、その他の要因も考慮に入れる必要があります。

ある種のシナリオでは、事故調査に備えて、高フレームレートのビデオを長期にわたって保管することが望ましい(あるいは法律によって保管が必須)場合があります。その場合、カメラの内のエッジストレージによる制約が生じるため、サーバーベースのストレージに定期的にデータを転送して移行する運用規則を設定しなければならない場合があります。このべストプラクティスに従えば、カメラ本体の盗難や破壊行為によってデータが失われる可能性も軽減させます。

 

ハイブリッドソリューションの一部分としてのエッジ

エッジソリューションの利点は明白です。とはいえ、ほとんどのお客様は最終的には、エッジ、オンプレミスサーバー、何らかのクラウドインフラを組み合わせたハイブリッドソリューションを選ぶ可能性が高いでしょう。

エッジソリューションのパワーと洗練された機能は、監視ソリューションにはるかに高い柔軟性をもたらします。エッジソリューションは、これまで実現不可能だった場所に高度な監視システムを配置することを可能にし、インフラ要件も大幅に削減され、その結果、あらゆる負担の軽減を実現します。

エッジソリューションの詳細については、こちらをご覧ください。

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