市街地監視における価値と総所有コスト(TCO)のバランス

Andreas Göransson

スマートシティのビジョンの実現に向けて、都市におけるデータの価値と重要性が高まり、関係当局はデータを作成・収集・解析するテクノロジーに投資を行っています。その中心に位置付けられるのがネットワークカメラと、モノのインターネット (IoT) と呼ばれるコネクテッドデバイスです。

都市で使用するテクノロジーにはすべてコストがかかり、ハードウェアへの初期投資・ソリューションのライフサイクル全体を通して発生する運用・保守費用に分けられます。2017年に行われた1,500台のネットワークカメラを10年のライフサイクルで運用するビデオ監視プロジェクトのTCO の調査によると、総費用の34%がハードウェアとソフトウェアへの初期投資であり、残りの66%が導入・保守・運用に必要なコストでした。

こうしたコストは、運営効率・ストレージや帯域幅など関連するテクノロジーにおける節約効果・都市のリソース利用の効率化など、ソリューションによってもたらされる価値と照らし合わせて評価されます。エッジアナリティクスと深層学習(ディープラーニング)がゲームチェンジャーとなり、ネットワークカメラの内部でデータを解析することによって本当に必要なデータ「のみ」を収集できるため、帯域幅とサーバー電力の節約につながっています。

しかし、システムの付加価値を計算するのは容易ではありません。都市当局がシステムの拡張を絶えず検討するつもりであれば、最初はコストが安いテクノロジーを選びたい誘惑に駆られるかもしれません。しかし、長い目で見ると不経済だったことが後で判明する場合が少なくありません。

 

TCOという考え方が不完全である理由

TCOモデルは、ハードウェアへの初期投資だけでなく、ビデオ監視システムのコストをライフサイクル全体で検証するのに有益です。ソリューションに関連して発生する目に見えるすべての支出を捉えるには、TCOモデルが役に立つ可能性があります。システム管理・ソフトウェアライセンス費用・ネットワークカメラとITのメンテナンス・エネルギー使用量は、数量化するのが比較的容易であり、ベンダーが費用固定のサービスパッケージを提供している場合は特にそうです。

一方、ビデオ監視ソリューションに付随して発生する可能性のある目に見えない潜在的なコストに光を当てようとすると、TCOモデルはそれほど役に立ちません。システムのダウンタイムはその代表例です。その影響がユーザーや用途によって千差万別であることを考えると、ダウンタイムが財政上深刻で重大な結果を引き起こす場合がありますが、TCOの計算にダウンタイムが盛り込まれることはめったにありません。

 

品質: 信頼性・堅牢性・回復力の基盤

都市で発生するシステムのダウンタイムは、原因が何であれ、コストに直接的・間接的な影響を及ぼす可能性があります。品質への投資は、直接的なメリットをもたらします。誤動作や故障を引き起こす要因はさまざまで、過酷な気象条件の他、都市生活の一部と言うべき粉塵や振動に対する耐久性の低さも含まれます。

都市の監視ソリューションで用いられるネットワークカメラの台数は非常に多く、数千とまではいかなくとも数百台に上る場合があるため、定期的に行う必要がある修理や交換だけでも、莫大な金額の直接経費になります。監視ソリューションのメンテナンスによる間接的な機能停止も、都市機能に影響を及ぼします。多くの場合、ネットワークカメラは、メンテナンスや交換作業の際に道路・自転車道・歩道などのインフラを途絶させざるを得ない場所に設置されています。

管理やシステムの正常性モニタリングをリモートから行えないビデオ監視ソリューションでは、ネットワークカメラの物理的な保守作業で工数が発生します。また、ネットワークカメラが故障し、状況の重大度を視覚的に確認できないという理由で、警備担当者を不必要に現場に派遣する場合にもコストが発生します。さらに深刻なケースとして、システム障害によって救急サービスの迅速な対応が不可能になると、損害という形で莫大なコストが発生しかねません。

ネットワークカメラとIoTの品質に関連して、TCOモデルに組み込むのが難しいもう1つの重要な分野がサイバーセキュリティです。「セキュア・バイ・デザイン」が実証済みで、定期的なファームウェアの更新によって新たな脆弱性に対応することを確約しているベンダー製のソリューションに投資することが不可欠です。スマートシティのインフラを狙ったサイバー攻撃の増加に伴い、都市のインフラ・救急・警察など、サービスの重要分野への深刻な影響が危ぶまれており、コスト的にも市民の安全面でも大きな悪影響が生じかねません。

 

柔軟性による将来の保証

誰もが実感しているように、テクノロジーの変化のペースは非常に速く、デバイスはあっという間に一目で時代遅れと分かるものになってしまいます。スマートシティのビデオ監視プロジェクトのような大規模な投資を行う際には、システムの将来性を確保することが極めて重要です。オープンスタンダードに基づくソリューションを採用すると、スマートシティの進化と要件に追従して対応できる柔軟性がもたらされます。不確実な世界では、柔軟性は何よりも重要です。

「より少ないリソースで、より多くのことを行う」が強力なトレンドになり、ネットワークカメラはますますパワフルに、多機能化しています。当初は安全とセキュリティを目的として導入したネットワークカメラでも、適切なアナリティクスを搭載し、同じネットワークカメラで都市計画・環境モニタリング・駐車管理など、他のさまざまな用途でデータを収集できます。実際、1台のネットワークカメラで収集したデータを、都市インフラとサービスの管理に携わる複数の関係当局で共有し、利用しているケースがあります。

スマートシティで初期投資を行う際に複数の機能を備えたデバイスを選択すれば、すべての機能が必要でなくても、将来を見越した柔軟性が確保されます。ネットワークカメラの処理能力と高度なアナリティクスに対応する潜在能力によって、現時点の品質への投資が今後の新しい拡張アナリティクスアプリケーションの利用を可能にします。

 

ビデオ監視におけるコストと価値のバランス

結局、ビデオ監視システムの総コストは、スマートシティで得られると予測される価値とバランスが取れていることが重要です。そのため、期待する価値とその測定方法を明確に定義する必要があります。

価値は、破壊行為や窃盗事件の減少などの直接的価値と、メンテナンス費用やエネルギー使用量の削減などの間接的価値に分けられます。今後、どの都市でも持続可能性が重視されます。簡単に言えば、頻繁に交換する必要のないネットワークカメラであれば、環境に直接的なメリットがあります。また、製品のプラスチック使用量を減らし、できるだけ多くの材料が業界に回収されるように製品ライフサイクル全体を管理するメーカーの取り組みを詳しくチェックすることが重要です。3つ目のポイントは、都市の持続可能性の目標の進捗状況をレポートする上で、映像とIoTがどのように役立つかです。

新たな分野で価値が生み出される可能性もあります。たとえば、交通や環境のモニタリングの最適化と管理は、都市の住みやすさ・住民の生活の質・都市の評判など、より「ソフト」な価値につながります。

スマートシティの関係当局は、テクノロジーとデータの利用を公言していても、限られたリソースと予算を最大限に活用しようとする際に、コストだけ、特に初期投資だけを重視しがちです。システムの寿命全体で発生する目に見えるコストと見えないコストだけに注目するのではなく、もたらされる価値とのバランスを考えることが重要です。品質に投資すれば、ほぼ間違いはありません。

AxisのTCOモデルへの貢献の詳細については、スマートシティマガジン2021をご覧ください。

スマートシティマガジン2021