2021年のセキュリティ業界に影響を及ぼす6つのテクノロジートレンド

未来に思いを馳せるときには、まず過去を振り返るのが有益です。過去の出来事を振り返ることで、未来の予測という活動への文脈が得られます。この1年を振り返ると、未来を予測しようとする試みが無益であることがはっきりと理解できます。

COVID-19のパンデミックは、2019年が終わる前からアジアに根を下ろしていましたが、2020年全体に渡って、世界的に途方もなく大きな影響を及ぼすと予測した人は、ほとんどいませんでした。短期間のうちに、私たちの生活様式、業務慣例、事業運営のあり方が根底から覆されました。旅行制限、ソーシャルディスタンスルール、ウイルス予防対策の必要性、医療サービスにかかるプレッシャーの増加といった様々な状況は、すべてセキュリティ業界に影響を及ぼしています。

従業員の安全衛生に始まり、ビジネスと労働者への影響に対処する中で、2021年以降も続くと予測される新しい働き方に加えて、テクノロジーやソリューションの新たな用途も観察されています。

技術は進歩し続けています。また、近年のトレンドがそうであったように、完全に新しいテクノロジーの出現というよりも、テクノロジーの「使い方」や「使う理由」と、その暗黙の意義によって2021年のトレンドが形作られる見通しです。

 

信頼はやはり最大の課題

トレンドに関する前回の記事でも信頼について言及しましたが、その重要性はさらに高まっています。信頼の維持には多くの要因が寄与しており、テクノロジー業界に注がれる審査の目は、かつてないほど厳しさを増しています。監視の増加もあり、顧客とエンドユーザーは、テクノロジーの利用やデータの管理の透明性を求めています。プライバシー保護のニーズと相まって、この点が重要な課題になるでしょう。

信頼をめぐる新たな議論は、あらゆる分野の組織が自らを信頼できる存在として積極的に証明する方法に直接的に影響します。セキュリティ業界はその性質上、信頼という分野で今まで以上に努力する必要に迫られるでしょう。

 

 

水平化する世界

近年の傾向として、アプリケーションやサービスの開発は、サーバーベース、クラウド、エッジなど、一定の環境を対象として行われてきました。最適なパフォーマンス、拡張性、柔軟性の欲求とともに、いつでも、どこからでもデータにアクセスできるという利点から、2021年は、環境間の水平統合の動きが見られると予測されます。

インテリジェント化するアプリケーションやサービスは、サーバー、クラウド、エッジのすべてに広がる形で展開され、それぞれの最も優れた機能を活用して、ソリューションのパフォーマンスや効率性の向上を実現するでしょう。たとえば、監視カメラのエッジ分析により、オペレーターにアラートを送信することが考えられます。この場合、オペレーターはクラウド上のアプリケーションを介してリアルタイムのビデオ映像にアクセスし、確認を行った上で、措置を実行することができます。

このような「水平型」アプローチへの転換により、セキュリティと監視は、事後対応から事前対応へ、手動から自動へと移行し、スピードと精度が高まると同時に、帯域幅、エネルギー、コストが削減されます。

 

サイバーセキュリティ: 継続的なトレンド

このような水平統合が行われると、強力なサイバーセキュリティがますます重要になります。結局、鎖の強さは一番弱い輪の強さでしかなく、脅威の絶え間ない進化に伴い、サイバーセキュリティの果たす役割は年ごとに重要になるでしょう。投資収益の高さと重要インフラの混乱の可能性に起因して、今までにない機能、戦術、脅威が続々と出現すると予測されるため、警戒を一時も怠ることはできません。

どの業界でも、サイバー犯罪者によるAIの利用が予測され、犯罪者の、脆弱性を発見して悪用する能力が格段に強化されるでしょう。ディープフェイクがさらに巧緻化してリアルになり、ビデオ監視による証拠に疑念が生じるおそれがあります。そのため、ビデオ監視の信憑性への信頼を保つために、コンテンツ、デバイス、アプリケーションを検証する手法の開発が必要になると予測されます。

サイバー犯罪の巧妙化により、今まで以上に見破りにくい仕掛けを施したフィッシングなど、確実性の高い手法が増えていくことも予測され、従業員がこのタイプの攻撃にさらされる可能性が高くなります。従来と同様に、絶え間ない教育とベストプラクティスの伝達が必要になるでしょう。

従来、サイバーセキュリティは「境界」モデルに基づいていました。ファイアウォール、VPN/VLAN、エアギャップ、ソフトウェア定義ネットワークなどのテクノロジーを利用して構築した1つの、願わくは侵入不可能な「壁」によってネットワークを保護するというものです。ところが現在、このモデルは課題を抱えています。1か所で侵害が発生すると、ネットワーク全体が危殆化するおそれがあります。

そのため、各デバイス、各アプリケーションのセキュリティプロファイルがそれぞれ独立的に評価される、ゼロトラストネットワークへの動きが加速すると予測されます。署名付きファームウェア、ソフトウェアのアップデート、セキュアブート、データとビデオの暗号化、安全なIDにより、デバイス間、アプリケーション間の通信を通じて、信頼がもたらされます。非難されるべき現代の風潮のように思えるかもしれませんが、何かを安全だと信頼する唯一の方法は、すべてを信頼しないことです。

 

AIの現実: 良いものを開発し、悪いものに注意を払い、厄介なものを予期して対処する

AIについてはかなり前から議論されてきたので、AIをトレンドと呼ぶのは果たして妥当なのかと疑問に思う人もいるでしょう。しかし現在、監視テクノロジーで機械学習 (ML) と深層学習 (DL) が幅広く利用できるようになっているため、AIの利用による影響は、2021年の1つの要因になると予測されます。

監視におけるAIについては、多様な用途の具体例があります。しかし、自動運転車の衝突事故など、他の業界で私たちが目にしたように、個々の失敗に向けられる関心の方が、AIの望ましいインパクトへの関心を往々にして上回っています。自動化で生じるエラーに重点を置いて語られる傾向が強く、この傾向が監視業界にも当てはまることは疑問の余地がありません。

しかし、それが阻害要因として作用するのは望ましくありません。監視における機械学習と深層学習の潜在的に有望な用途を見失わないようにする必要があります。たとえば、エッジデバイスでこれらの機能を利用すると、物体の識別が容易になり、誤検出を低減できる可能性があります。その結果、セキュリティの専門家は、手作業による継続的なモニタリングを脱却して、イベントに基づく事前対応型の働き方に移行できるようになります。

 

少接触・非接触型テクノロジーが表舞台に

今年確立された規制、規則、消費者習慣は、2021年にはごく当たり前の常識になると予測されます。衛生上の懸念やソーシャルディスタンスに後押しされる形で、テクノロジーによってこれらを監視、実施する手段が求められるでしょう。その結果、とくにアクセスコントロールなどの分野で、少接触、非接触型のテクノロジーを導入するケースが増えると予測されます。それに加えて、ソーシャルディスタンス規制を確実に遵守する目的で、人数計測機能を備えた監視ソリューションが標準になるでしょう。

 

 

持続可能性について再考

パンデミック中に懸念されたことの1つが、環境や持続可能性に対する関心の低下でした。いくつかの重大な環境異変が起こった結果、こうした認識が表面化するようになり、2021年には、持続可能性が再び重要な懸案事項になると予測されます。

監視業界が環境にもたらすメリットとして、最もインパクトが大きい分野は、製品に使用する材料とその寿命です。プラスチックやポリ塩化ビニルの使用量の削減と並行して、リサイクル材料やリサイクル可能な材料のレベルを上げるために多大な努力が行われていますが、さらに前進する余地があります。

お客様にとっては、製品に用いられる材料とともに、製品の耐用年数も重要な意思決定要因になると予測されます。2~3年使用しただけで交換しなければならない製品よりも、耐用期間の長い、高品質な製品を選択する方が、環境、そして経済にとってはるかに良いことは言うまでもありません。

 

唯一変わらないのは「変わること」

予測は、明らかに割り引いて考えるべきであり、2020年に起こった事象そのものが、未来に起こる事象を正確に予測することのリスクを如実に物語っています。それでも、この記事では、騒然とした不穏な環境でも十分に応用できる程度に、幅広くトレンドを紹介できたと確信しています。未来に何が起ころうとも、不確実な時期には俊敏性や問題解決へのオープンなアプローチがより重要になるのは、変わらぬ真実と言えるでしょう。

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