変わりゆく小売環境: オーディオとアナリティクスで適応する方法

小売店舗にショッピングに出かけたり、外食をしたり、ジムに行ったりすることが他の余暇活動と変わらない日常の行動だったのは、ついこの間までのことでした。多くの地域で外出禁止令が出される事態となり、こうした行動が突如として途絶えました。現在、一部の地域で徐々に経済活動が再開されるにつれ、小売店は新たな問題に直面しています。安全に店舗を運営するには、どうすればよいでしょうか? 現在の状況は、数か月、数年先のビジネスをどのように変えていくのでしょうか? 社会の動きの突然の変化に図らずも適応する必要に迫られているのは、消費者も小売企業も同じです。

すべての人が「ニューノーマル」に適応しつつある今、小売企業は、医療専門家や監督機関によるガイドラインや規制を順守しながら顧客ニーズを効率よく満たす方法を模索しています。

ここ数週間ほど、こうした新しい課題に対処する際にネットワーク監視ソリューションがいかに役立つかについて、さまざまな質問がAxisに寄せられています。当ブログでは、Axisの小売、銀行担当ビジネスディベロップメントマネージャー、Rick Snook、オーディオ担当ビジネスディベロップメントマネージャー、Chris Wildfoersterとともに、現在の小売環境について検証します。映像、音声、アナリティクスに基づくネットワーク技術が小売企業の現在と今後にどのように貢献するか、さまざまな用途を紹介します。

 

現在の危機が引き起こした小売環境の変化

小売企業にとって、消費者の買い物体験は常に最大の優先事項でした。しかし今は、何よりも、買い物客の健康と安全を優先し続けることが最重要課題になっています。
現時点で、ほとんどの小売店が、すでに何らかの方法で対応しています。レジカウンターは、顧客の列とプラスチック製のシールドで区切られるようになりました。人と人との間隔に引き続き厳しい監視の目が向けられているため、テープで貼り付けた矢印で一方通行の通路を示し、密集を防ぎ、人の流れがスムーズに保たれています。また、床にマークを配置して、レジに並ぶときは前の人と1.8 mの距離を取るよう指示しています。顧客の入店を極力抑えたい小売店では、従業員が店先に止めた顧客の車まで商品を運ぶサービスを行っています。

オンラインで購入した商品を、配送で受け取るのではなく、最寄りの店舗に自ら取りに行くBOPIS (Buy-online-pickup-in-store) は、かなり前から望ましいとされていたサービスでしたが、現在の状況から、小売企業が需要に応えるために、適切なプロセスを整備する必要性が加速しています。実際、Package Conciergeが最近行った調査によると、若年層を中心とした消費者のほとんどが、購入した商品をなるべく早く受け取りたいという理由から、このオプションを選択しています。一部の大手小売企業は、商品を自ら取りに行くか、配送してもらうかをオプションとして選択できるようにして、実際に好業績を上げています。顧客は、オンラインと実店舗が同期した購買体験を望んでいるため、デジタルと実店舗販売形態のシームレスな融合を提供する小売企業が、長期的に有利な立場を築くと予測されます。

もちろん、ここで問題が生じます。「小売店が、店内または店先で商品を受け取れるオプションを安全に提供するにはどうすればよいか?」という問題です。

 

IPオーディオシステムとアナリティクスで高品質のサービスを提供し、顧客の安全を確保

前述の安全手順は優れた出発点になりますが、実施しようとしても簡単にはいかない場合があります。たとえば、床に矢印をテープで貼り付けても、買い物客が必ずそれに従うとは限りません。密集した状態でレジ前に並び、規定の1.8 mの距離を取っていない場合があります。従業員が手を洗うのを忘れたり、手指の消毒剤を使わなかったりすることもあります。
店舗によっては、職員が監視を行い、ルールを強制的に守らせることも考えられますが、どうしても目が行き届かない状況が出てきます。そこで役立つのがネットワーク監視テクノロジー、特に、IPオーディオ小売アナリティクスです。

 

テクノロジーを利用してソーシャルディスタンスのガイドラインを順守

ソーシャルディスタンスのガイドラインを小売店で効率的に順守するには、どうすればよいでしょうか? 店内の混雑が各州で指示されている水準を超えないようにするには、どうすればよいでしょうか? 従業員と顧客に衛生上の最適な行動を徹底してもらうには? こうした問題に、ネットワーク技術でどのように対応できるかを見ていきましょう。

待ち行列監視: 小売店で待ち行列の長さを抑える方法の一つが、キューモニターを搭載したネットワークカメラとネットワークスピーカーを含むIPオーディオシステムの導入です。待ち行列を監視することによって、混雑の発生場所に関する正確なリアルタイム情報がもたらされます。混雑の発生というイベントが発生し、ネットワークカメラがこの状況を検知すると、IPオーディオシステムに指示が送られ、「前のお客様の精算が済むまで、1.8 m離れてお待ちください」といった内容の音声クリップが再生されます。同じソリューションを利用して、レジの応援が必要になった場合に、従業員に通知することもできます。実際、この方法によって精算がスピードアップし、レジ前の混雑解消に役立ちます。

待ち行列監視アナリティクスは、時間帯による客足や待ち行列の変動についても貴重な情報をもたらします。このデータを分析してリソース配分を改善し、待ち時間を短縮して、全体的なカスタマーエクスペリエンスの向上を実現することができます。まだアナログ式のハードウェアを使用している小売企業も、心配は無用です。アナログオーディオシステムとIPオーディオシステムを接続するオーディオブリッジにより、最新のネットワーク技術を活用することができます。オーディオブリッジは、定期的な間隔でいくつかの決められたメッセージを流すなど簡単なルールに沿った自動放送に対応しています。

混雑率の上限: 小売店が現時点で抱えている問題の一つが、店内の混雑状況への対処です。多くの州で、段階的に経済活動が再開されつつあります。この段階的な再開の一環として、店内の人数制限が行われており、多くの場合、最大収容人数の25~50%からスタートしているように見受けられます。

小売企業は、混雑率の上限をユーザーが定義できるアナリティクスを利用して、混雑状況に対処することができます。この種のアナリティクスアプリケーションをネットワークカメラと組み合わせると、ある時点における店内の人数のリアルタイムデータが得られます。ネットワークソリューションがその情報をパーセンテージでモニターに表示します。店内の混雑率が所定の閾値を超えた場合、特定のメッセージをポップアップ表示したり、店舗の入口で赤信号をオンにしたり、IPオーディオシステムを通じて音声クリップを再生したりすることができます。

小売店で収集したデータを利用して、時間帯や場所別のパフォーマンスの比較が行えます。需要を正確に把握し、最も混雑する時間帯を顧客に知らせるには、この知見が役立ちます。このような情報を提供すれば、より長い時間にわたって客足が分散し、混雑を緩和させることができます。

スタッフがリアルタイムな状況に適切に対処し、買い物客の流れをスムーズにする上でアナリティクスが役立ちます。

 

テクノロジーを利用してショッピング中の安全衛生を確保

店内各所に手指の消毒剤を配置することも、来店客を感染から守るために行われている対策の一つです。米国のある小売企業では、トイレの「入口」に手指の消毒剤を置き、使用を奨励しています。また、多くの小売企業が、店舗の入口に手指の消毒剤を配置しています。

どちらのケースでも、テクノロジーの力を借りずにルールを徹底させるのは、不可能ではないにしても困難です。クロスラインディテクションは、ネットワークカメラに導入できる単純なトリップワイヤー (仕掛け線) アプリケーションです。ユーザーが定義したカメラ映像上に仮想的に引いた線を誰かが横切ると、イベントが発生したと認識して通知します。このアプリケーションによって、IPオーディオシステムに指示が送られ、顧客や従業員が店舗やトイレに入る前に、消毒剤の使用を促す録音済みの音声クリップが再生されます。建物からの退出時にも同様のことが可能です。

ドアノブなど、物の表面を常に清潔に保つのも難しい課題です。小売企業では、ネットワークドアステーションを利用して従業員専用エリアへのキーレスエントリーを設置して、病原菌の発生、拡散を抑えることができます。従業員がカメラに映ると、ネットワークソリューションによって、立ち入りが許可されている職員のデータベースが照合されます。システムによって許可が下りると、ネットワークソリューションによって、自動的にドアが開錠されます。

 

顧客の入店が許されない状況で安全に効率よくサービスを提供する方法

小売企業は、前述の店先での商品の受け取りオプションや、オンデマンドの配達サービスを利用して、顧客を店に入れることができない場合にも営業を続けられるよう、適応しています。

店先での商品の受け取り: 対面接客を避けながらサービスを提供できるネットワーク監視ソリューションが存在します。

その一つが、ナンバープレート認識ソリューションの導入です。この種のアナリティクスアプリケーションは、自動車のナンバープレートをリアルタイムで読み取り、登録済みのナンバープレートリストと照合して、顧客が商品を受け取るために店の前に到着した時点で認識してシステムに通知します。IPオーディオシステムを通じて、「いらっしゃいませ。ご注文の品をすぐにお持ちします。トランクを開けてお待ちください」といった録音済みのメッセージを店外にいる顧客に向けて再生します。

もう一つの選択肢として、QRコードを利用するソリューションの導入があります。このシステムでは、購入顧客の個人の情報と、その人が建物に入れる時間を含んだ来客リストを作成します。該当する人にQRコードを発行すると同時に、アクセスドアコントローラーにも同じコードを送信します。その人が到着してQRコードをかざすことで、ネットワークドアステーションが建物への立ち入りを許可します。従業員が物理的にその場所にいる必要はありません。受け取り時間の変更やキャンセルの希望があった場合、必要に応じて対応することができます。

店先での商品の受け取りと配送: 小売店は、ネットワークドアステーションを利用して、受け取り、または、配送の準備が整った品目の情報を伝達することができます。たとえば、トリップワイヤー仕掛け線アプリケーションを使用して、ドアステーションを起動します。こうして、このドアステーションの軌道通知を受けた建物内の従業員が、運転者と双方向の対話を行うことができます。
これに類似したソリューションも設定できます。運転者が呼び出しボタンを押すと、IPオーディオシステムに通知が送られ、「配達ドライバーが集荷に到着しました」といった録音済みの音声クリップが再生されます。
顔認識テクノロジーを利用して、呼び出しボタンを不要にすることもできます。運転者が到着し、商品の受け取りの準備ができているという通知が顔認識により自動的に実施されます。

 

急速な変化にも適応するテクノロジー

小売企業にとってなじみ深いビジネス慣習が根こそぎ覆されたのは、わずか数か月前のことです。以来、小売企業は、すばやい動きで適応してきました。顧客の安全と買い物体験を確保しながら、費用対効果に優れた革新的なビジネスソリューションに集中することが、かつてないほど重要になっています。

ぜひ理解していただきたいのは、小売企業は独力でこの苦しい戦いに挑むわけではない、という事実です。急変する今の世界で、小売企業とその他の多くの企業による顧客ニーズへの対応、衛生規定の順守、効率的な事業運営を支援する、映像、音声、アナリティクスを活用したネットワーク監視ソリューションが存在します。

 

現在の課題に対応するソリューションの詳細については、こちらをご覧ください

 

Rick Snookは、アクシスコミュニケーションズのビジネスディベロップメントマネージャーです。Rickは、主にカナダの小売、銀行市場を担当しており、サポートと教育を行い、総合的で持続可能性の高いソリューションを提供して大規模なエンドユーザーを支援し、Axisチャネルパートナーを保護しています。
2015年、カナダ中部市場におけるエンドユーザーサポート担当のキーアカウントマネージャーとしてAxisに入社したRickは、電子セキュリティ業界で34年以上のセールス、マーケティング、技術、設計の経験があります。
Rickは長年にわたり、CANASA、ASIS、Security Industry Associationなど、有力な業界団体に関与しており、セキュリティ業界における業績と業界全体の利益向上への重要な貢献によって、RA Henderson Awardを受賞しています。Rickは、ASIS Internationalが認定したPSP (Physical Security Professional) CPTED Level 1の資格と、アクシスコミュニケーションズが認定したACP (Axis Certified Professional) 資格を保有しています。
Chris Wildfoersterは、アクシスコミュニケーションズのオーディオソリューション担当ビジネスディベロップメントマネージャーであり、オーディオ市場におけるAxisのシェアの拡大を目的とした戦略開発を担当しています。
Chrisは、オーディオ、コントロール業界での30年の経験を持ち、商用、プロフェッショナルAV市場におけるチャネルの構築、戦略的パートナーシップの推進、市場化戦略の開発に携わってきました。Bogen Communications、BOSE、Crestron Eletronics、ClearOne、MUSIC Groupなど、業界有数の企業との共同作業の経験があります。
ChrisはAVIXA、CEA、CEDIA、NSCAなど、さまざまな団体に積極的に貢献しており、AV、ITインテグレーター、販売代理店との協力、新規市場の開拓、ビジネス、技術アライアンスの強化に関する専門性には定評があります。