2020年にセキュリティ業界に影響を与えるマクロトレンドの予測を振り返る

Peter Lindström

ノーベル物理学賞を受賞したデンマークの物理学者、ニールス・ボーアは、「予測、特に未来を予測することは非常に困難である」という有名な言葉を残しています。

彼はさすがでした。

今年の1月、私は、2020年にセキュリティ業界に影響を与えると考えられる、広範囲におよぶマクロトレンドについて、ブログ記事を公開しました。COVID-19のパンデミックによって、世界中の人々の職業生活や個人生活にこれほど大きな混乱が生じることを、その時点で予測していた人はほとんどいなかったでしょう。
この数か月の間に、予測したトレンドにどのような影響が出ているか、見直してみると興味深いのではないかと思いました。関連性がより高まったトレンドもあれば、それほどでもないトレンドもあるかもしれませんが、どのトレンドにも何らかの形で影響が表われているはずです。

 

1. 信頼

最初のトレンドは、信頼に関するものです。私は、このトレンドは他のすべてのトレンドと結び付いていると考えます。数か月経った今も、私たちの考えはまったく変っていません。市民、企業、政府の間の関係における中心的な原則が信頼であることは明らかです。信頼は、かつてないほど重要になったと言えるでしょう。

ビジネスにおいては、すべての企業がパンデミックの影響に対して、業務上、機敏に対応する必要に迫られました。1つ1つの意思決定が、企業とそのステークホルダーである従業員、顧客、サプライヤー、地域社会との信頼関係に潜在的に影響を与えます。企業の根底にある真の価値観が、良くも悪くもこれほど露呈した時期はおそらくなかったでしょう。この記事では、AxisのCEOであるRay MauritssonとCTOのJohan Paulssonが、倫理と信頼がビジネス、テクノロジー、企業のさまざまな側面に与える影響について語っています。

私たちは、今なおパンデミックへの対処に追われています。市民と公的機関、民間機関の間で信頼の絆が弱まったのか、それとも強まったのかが明らかになるのは少し先のことでしょう。それでも、信頼は重要です。

 

2. 安心感の必要性

今でも関連性が低下していないと自信を持って言えるトレンドが1つあるとすれば、それは、人間の安心感に対する根本的なニーズです。この数か月間、人々の安心感は明らかに打ち砕かれました。私たちは折に触れ、友人や家族の健康状態について不安を感じ、日常生活のさまざまな側面に生じた重大な変化や制約に戸惑うばかりでした。この状態は、生活の一部分が長い時間をかけて「正常」に戻り、それ以外の部分が永遠に変わってしまうまで続くでしょう。

ビデオ監視は、国内規制や国際規制を順守して使用する限り、プライバシーを侵害せずに人々を安心できる状態に保つ上で長い間、一定の役割を果たしてきました。これは、まったく変わっていません。実際にビデオ、音声、アクセスコントロール技術は、公衆安全ガイドラインを確実に順守するのに役立ちます。公共空間、店舗、オフィスで人数や人の密度を管理する場合も、施設利用の際に接触点を減らす場合も、公衆衛生に関する重要な情報を伝達する場合も、テクノロジーは有益です。

 

3. 持続可能性と環境

より広範なパンデミックの影響、とりわけ、海外旅行や国内旅行の減少は、世界的に環境保全上のメリットになりました。企業活動と商業活動の回復に伴い、これらのメリットがきっかけとなって、環境に対する責任や持続可能なオペレーションに向けてさらなる努力がなされることを願っています。こうした努力の一部は、消費者行動によって推進されると確信しています。

さらに広い範囲で考えると、環境に対する責任において、企業が持続可能性を目的として採用するアプローチは常に、その企業のビジネス倫理に対する全体的なアプローチの一部です。この点についても、あらゆる企業の基本的な価値観が、パンデミックへの対応を通じて明らかになっています。

ビジネスに対する強力な倫理的アプローチを伝統的に立証している企業は、パンデミックへの対応を通じてそれが明らかになり、より深い関係に支えられた、より強力な存在として浮上すると予想されます。「正しい行い」が今ほど重要な時期はありません。

 

4. 都市化

もう1つの重要なトレンドが都市化です。長い年月にわたって、人口が都市に集中する動きが見られましたが、この傾向にパンデミックがどのように影響するかは興味深いところです。密集した地域で生活することによる健康リスクの認識と、柔軟な働き方が現実味を帯びてきた実感から、多くの人が都心を脱出するのではないかという予測が、すでに一部の市場で語られています。

ただし、出勤があるとしても週1~2回だけのリモートワークは、労働人口のうちの少数の人々しか享受できない贅沢だという主張も成り立つでしょう。結局、都市から人々が大量に脱出する事態は起こりそうもなく、都市を安全で効率的な状態に保つためにテクノロジーが一定の役割を果たす必要性は変わらないようです。

 

5. 世界政治の影響

世界政治とビジネスの密接な関係がパンデミックによって弱まった証拠がないのは確かです。各国政府のおそらく当然の願望は、自国民の健康と安全の重視であり、グローバルサプライチェーンの混乱もあり、資源、能力、人材をめぐる長期の保護貿易主義につながる可能性があります。ただし、各国がパンデミック後の「より良い復興 (Build Back Better)」を目指し、より回復力の高い社会を築くための教訓を私たちが完全に学ぼうとするのであれば、開放性、公正性、透明性が必要不可欠です。

世界中の人々の職業生活と家庭生活に影響を与える、さらに多くのトレンドが、今後数か月のうちに出現すると私は確信しています。パンデミックと将来的なウイルスの再来のリスクを減らす、さまざまな対策が整備されるにつれ、私たちが確かな教訓を学び、生き方の改善につながる根本的な変化を起こす機会が生じます。私たちは、その機会を確実につかみ取る必要があります。

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