患者のケアをビデオで改善する方法

医療施設では、人や資産を守る目的で、長年にわたってビデオを利用してきました。ここでは、従来型のビデオ監視を利用して患者のモニタリングやケアを改善する方法について考えてみます。

重症患者の遠隔測定を補完

心臓モニター、人工呼吸器、点滴ポンプなど、重症患者の生命維持のための機械類が、煩わしい誤認アラームの発生源になる場合があります。

医療チームは、時が経つにつれ、いわゆる「アラーム疲れ」に陥ります。ひっきりなしに鳴る警報音に無頓着になり、アラームをすぐに切る、アラームに気が付かないという状態に陥り、時に、それが悲劇的な結果を招く場合があります。実際、Emergency Care Research Institute (ECRI) は、アラームが及ぼす危険を医療テクノロジーハザードの第1位に位置付けています。

アラーム疲れの解決を目的とする分野横断的なアプローチにビデオを追加すると、「患者が呼吸困難の兆候を示していないか?」「点滴は正しく行われているか?」「心臓が本当に鼓動を停止したのか、それとも心臓センサーが外れただけか? 」など、患者の容体やアラームの原因を音声と画面を通じて確認できるようになります。

詳しい状況認識が可能な集中型ビデオモニタリングを導入すれば、少人数の介護者で重篤な患者を的確に観察できるようになります。さらに、複数のセンサーによる音声、画像情報が、介護者の注意力を高めます。

より強力なナースコールソリューション

一般に、従来型のナースコールテクノロジーは、病室の外に設置されたランプを点滅させるだけです。患者のニーズについては、ごくわずかしか認識できないため、複数の患者がいる相部屋の場合、どの患者が介助が必要かを介護者が把握できない場合があります。医療チームは、患者の病状に関する知識を応用して対応に優先順位を付けますが、重症患者が水を欲しがっているだけだったかと思えば、簡単な手術で入院中の患者の症状が突然悪化することもあります。

進歩的な病院において、本来、訪問者の姿を確認できるビデオインターコムとして設計されたネットワークドアステーションが、きわめて効率的なナースコールソリューションになることが明らかになっています。患者がコールボタンを押すと、患者と介護者の間で、高品質ビデオ、双方向音声を使用して接続が確立されます。この接続によって、介護者は患者のニーズをすばやく把握でき、患者は介助の要求が届いたことを確認できます。

スタッフのリスクを低減

多くの医療施設で、依然として、1対1の患者モニタリングが行われています。通常、Certified Nursing Assistant (CNA) の資格を持つ看護人が、転倒するリスクが高い患者や、認知機能が衰えた患者の病室で付き添い、監視を行います。患者に攻撃的な傾向がある、麻薬の影響下にある、自分や他人に危害を及ぼすおそれがあるといった場合には、病院の保安チームのメンバーが見張り役になり、責任を果たしている場合もあります。

継続的な物理的監視は、大量のリソースとコストが必要なだけでなく、患者にとって非常に侵害的であるばかりか、場合によっては、病院スタッフの身に危害が及ぶこともあります。

リモートビデオ監視をベースとするバーチャルな患者監視は、コストパフォーマンスに優れた、大量のリソースを必要としないソリューションであり、適切な解決策になる可能性があります。少ないリソースで多くの患者を監視できるだけではなく、病院スタッフを危険から守ることができるのが重要なポイントです。

転倒を検知する能力の向上

毎年、米国では70~100万人が病院で転倒していると推定されています。転倒による負傷から生じる病院費用は、平均で3万米ドルを上回り、年間の直接医療費が最大200億~300億ドルも膨らんでいます。この金額には、個人が感じる痛み、苦しみや、生活の質や平均余命への悪影響は反映されていません。医療機関が転倒検知デバイスや転倒防止プログラムに多大なリソースを投入しているのも当然と言えるでしょう。

以前のブログ記事で、ビデオ監視によって実現される信頼性の高い転倒検知について検証しました。具体的には、サーマル画像を利用してハイリスクな動きを検知する仕組みや、他の転倒検知デバイスからのアラームを確認する仕組みを紹介しました。これは、完全な暗闇の中でも可能です。病院で、離れた場所から誤認アラームを確認できれば、リソースに優先順位を適切に付けられるようになり、就寝中の患者を不必要に起こすこともありません。サーマル画像であれば、個人のプライバシーや人格が完全に尊重されます。

救急車搬送中に遠隔から診断、治療

重病患者や重症患者の場合、早期の診断と治療が生死を分ける場合があります。正確な診断を下すには、資格のある医師による目視観察が欠かせません。モバイル監視の厳しい条件を前提に開発された高解像度ビデオカメラを導入すると、救急科の医師が患者の容体を遠隔から判定し、患者が病院に到着する前に一連の処置を指示することができます。

患者の症状によっては、より適切な治療が可能な別の病院へ搬送するよう、救急隊に指示を出すこともできます。また、多発している、緊急性のない患者の不要な医療搬送への対策として、遠隔診断を通じて医療搬送チームの応急処置をサポートし、処置後は患者を帰宅させるよう指示することもできます。

自立生活と信頼性の高い在宅医療

世界的に高齢化が進んでいます。実際、高齢化は、ほぼすべての国に影響を及ぼす今世紀最大の社会的変質の一つになると予測されています。国連の試算によると、60歳以上の人口は2050年には今の2倍、2100年には3倍に増える見通しです。高齢化と歩調を合わせるよう努力を続ける医療業界にも、非常に大きく影響します。

リモートビデオ監視は、限られたリソースを最大限に活用して、自立した生活と信頼性の高い在宅医療を両立させる手段になります。定期的なモニタリングと、特定の事象が発生したとき送信されるアラームを組み合わせることで、介護者が緊急事態にリアルタイムで対応し、誤認アラームをすばやく却下することができ、高齢者とその家族に安心感がもたらされます。

患者モニタリングに最適なテクノロジーの発見

ここでは、患者のケアに望ましいインパクトを与えるだけでなく、コストの節約やリソースの有効利用につながるビデオの利用法を少しだけ紹介しました。患者という最も弱い立場にある人々をビデオで監視する場合には、慎重な配慮とともに、プライバシーや人格を厳密に尊重する姿勢が要求されます。その意味でも、サイバーセキュリティを確保し、モニタリングに関する固有のニーズに応じて透明性とプライバシーの適切なバランスを実現するテクノロジーに投資することが重要です。

最高のプライバシー保護を実現し、どんな照明条件でも使用できるサーマルテクノロジー。薄暗い病室でも明確なディテールと色の再現性が得られる低照度テクノロジー。点滴の状態を高コントラストで視覚化するデイナイトテクノロジー。患者と介護者のコミュニケーションを確立し、音声による重要な手掛かりを提供する双方向音声。患者が苦しんでいるときに介護者にアラームを送信するインテリジェントなビデオアナリティクスなど、さまざまなビデオテクノロジーが存在しますが、確かなことは、世界中のスマートな医療機関が、患者ケアにおけるビデオテクノロジーの利点を早くも実感しているという事実です。

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